中国経済は、年間20%以上の伸びを示してきた輸出産業を牽引力に、2003年以降二桁のGDP成長率を誇ってきた。だが2008年9月に起こったアメリカ発の金融危機は、中国をも直撃。この年の7−9月期の成長率は9%と、前年同期の11.9%から大幅に低下した。中国政府はこの経済情勢の悪化を受けて、11月に大胆な景気対策を打ち出した。これまでの景気過熱とインフレ加速を防止する金融引き締め政策を一変。積極的な財政政策と金融の緩和に大きく転換し、2010年末までの2年余りで総額4兆元(約57兆1360億円)に昇る景気対策を発表した。これは2007年GDPの16%に相当する対策であり、日本に置き換えると約80兆円、国家予算の総額にもなる。
世界最高の成長率を過去5年間も遂げてきた中国が、なぜこのような破格の対策を突如打ち出したのか。本稿では、その謎を解くべく中国経済が現在抱える問題、4兆元の用途とその狙い、また見込まれる経済効果と問題点について、リサーチレポートを交えつつ自分の意見を述べたいと思う。
東アジア政治経済論Ⅱレポート
中国の4兆元景気対策
中国経済は、年間20%以上の伸びを示してきた輸出産業を牽引力に、2003年以降二桁のGDP成長率を誇ってきた。だが2008年9月に起こったアメリカ発の金融危機は、中国をも直撃。この年の7−9月期の成長率は9%と、前年同期の11.9%から大幅に低下した。中国政府はこの経済情勢の悪化を受けて、11月に大胆な景気対策を打ち出した。これまでの景気過熱とインフレ加速を防止する金融引き締め政策を一変。積極的な財政政策と金融の緩和に大きく転換し、2010年末までの2年余りで総額4兆元(約57兆1360億円)に昇る景気対策を発表した。これは2007年GDPの16%に相当する対策であり、日本に置き換えると約80兆円、国家予算の総額にもなる。
世界最高の成長率を過去5年間も遂げてきた中国が、なぜこのような破格の対策を突如打ち出したのか。本稿では、その謎を解くべく中国経済が現在抱える問題、4兆元の用途とその狙い、また見込まれる経済効果と問題点について、リサーチレポートを交えつつ自分の意見を述べたいと思う。
減速する中国経済の現状
中国経済が現...