脳神経外科

閲覧数4,891
ダウンロード数22
履歴確認

    • ページ数 : 11ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    Ⅰ.脳の解剖と、各々の部位が傷害された時の症状
    図1)左大脳半球外側面のBrodmann area
    図2)右大脳半球内側面のBrodmann area
    1-1.前頭葉の機能とその障害(図1,2)
     中心溝前方の中心前回にある運動野(area4)は、Betz細胞が錐体路に繊維を送り対側半身の随意筋を支配する運動中枢である。この運動野が障害されると対側に弛緩性の運動麻痺が見られ、筋緊張低下、腱反射低下、病的反射としてBabinski母趾背屈反射などが見られる。
    運動野の前方には前運動野(area6)がある。前運動野は、運動野から出るニューロンの活動を調節し、運動を円滑に行うように働く。さらに前運動野は、多方面に線維を送り、基底核や視床とも密接に関連し、錐体外路系にも多くの線維を送っているので不随意運動の中枢として働く。前運動野の単独の障害では、対側の痙性不全片麻痺、巧緻運動の障害、強制把握、筋緊張亢進、腱反射亢進などが見られる。
    前運動野の前方にある共同眼球運動野(area8)は、両眼を共同させて動かす働きを行う凝視中枢である。てんかんの発作時などでこの部位が刺激されると対側への共同偏視(両眼球が同側を向く)が、出血などでこの部位が破壊されると同側への共同偏視が生じる。
    前運動野の前下方にある運動性言語中枢(Brocaの中枢,area44,45)は優位半球に存在し、98%のヒトで左半球に存在する。これは右利きのヒトが多いことが関係していると考える。この部位が障害されると運動性失語症をきたし、相手の言葉は理解できるが、うまくしゃべることができなくなってしまう。
    上記以外の前頭葉前部のareaは前頭連合野と呼ばれ、高次の精神機能を担っている。この部位が障害されると、人格の変化や道徳心の低下、記銘力低下や無欲状態などの症状が出現する。
    1-2.頭頂葉の機能とその障害(図1,2)
     中心溝後方の中心後回は一次性体性知覚野(area3,1,2)であり、体表の知覚、すなわち温痛覚、触覚、圧覚や、振動覚などの深部感覚に対する中枢である。これらの知覚刺激は視床にて大まかな感じとして知覚され、その後area3,1,2にて刺激の局在、強さ、種類が区別される。よってこの部位が傷害されると温痛覚、触覚、圧覚、振動覚などの知覚そのものは保たれているが、その刺激が身体のどの部位に与えられたかを正確に理解できなくなる。
     中心後回の後上方にある体性感覚の二次連合野(area5,7)は、一次性体性知覚野に入ってきた様々な情報を統合し、以前に蓄積された経験や情報と比較しながら、最終的な判断を下す部位である。よってこの部位が傷害されると、目を閉じて何かに触れた場合、物に触れているという感じはわかってもそれが何かわからないというような症状が現れる。
     中心後回の後下方にある三次連合野(area40,39)は、二次連合野の情報をさらに処理する部位であり、area40を角回、area39を縁上回と呼ぶ。これらの部位に障害が起これば、二次連合野から送られてきたいろいろな情報の処理が困難となり、感覚は正常に保たれていても、三次元の空間で自分自身がどのような状況にあるのかが把握できなくなってしまう。また、優位側の角回の障害ではGerstmann症候群、すなわち手指失認、左右失認、失算、失書の4症状が出現する。
    1-3.側頭葉の機能とその障害(図1,2)
     左半球の上側頭回には感覚性言語中枢(Wernickeの中枢,area22)がある。この部位が障害されると感覚性失語症をきたし、音や声は聞こえるが

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    Ⅰ.脳の解剖と、各々の部位が傷害された時の症状
    図1)左大脳半球外側面のBrodmann area
    図2)右大脳半球内側面のBrodmann area
    1-1.前頭葉の機能とその障害(図1,2)
     中心溝前方の中心前回にある運動野(area4)は、Betz細胞が錐体路に繊維を送り対側半身の随意筋を支配する運動中枢である。この運動野が障害されると対側に弛緩性の運動麻痺が見られ、筋緊張低下、腱反射低下、病的反射としてBabinski母趾背屈反射などが見られる。
    運動野の前方には前運動野(area6)がある。前運動野は、運動野から出るニューロンの活動を調節し、運動を円滑に行うように働く。さらに前運動野は、多方面に線維を送り、基底核や視床とも密接に関連し、錐体外路系にも多くの線維を送っているので不随意運動の中枢として働く。前運動野の単独の障害では、対側の痙性不全片麻痺、巧緻運動の障害、強制把握、筋緊張亢進、腱反射亢進などが見られる。
    前運動野の前方にある共同眼球運動野(area8)は、両眼を共同させて動かす働きを行う凝視中枢である。てんかんの発作時などでこの部位が刺激されると対側への共同偏視(...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。