クシ・クスの呪力
一 派生語
二 「奇し」
①串
②櫛
③髪
④薬
⑤酒
⑥楠
三 まとめ
参考文献
中村幸彦[ほか]編 角川古語大辞典第二巻 角川書店 1984
秋山虔編 王朝語辞典 東京大学出版会 2000
杉本つとむ著 語源海 東京書籍 2005
土橋寛[ほか]編 鑑賞日本古典文学第4巻歌謡Ⅰ 角川書店 1975
小島憲之[ほか]校注・訳 新編日本古典文学全集9 小学館 1996
佐竹昭広[ほか]編 新日本古典文学大系19 岩波書店 1993
角林文雄著 『日本書紀』神代巻全注釈 塙書房 1999
西宮一民校注 古事記 新潮社 1979
日本語語源研究会編 語源探求4 明治書院 1994
一 派生語
日本語の「ツル」という名称に触れる場合、鶴、蔓、弦、吊、釣、連など、様々な単語が浮かべられる。この「ツル」という名称について考えてみると、これらの中には、一言でいうと、「細長い」というものが互いに存在されているということに共通性があるようである。
まず、「鶴」を見てみる。鳥という動物は、一般的に、首が細長いが、特に、「鶴」は、他の鳥に比べて、その首「細長くて背が高い」鳥である。従って、「ツル」という名称は、この、「細長くて背が高い」格好から、このように、名付けられたのではないかと思われる。次に、「蔓」は、植物に生える、細長い線条の紐状態のものであり、「弦」も一種の「紐」である。また、一方、「吊る」は、線条のものを、空中に垂らすという動作を、動詞化した言葉のようである。それと同じく、「釣る」という動詞も、紐を空中に垂れ下げる動作であるから、上述の「吊る」と同じ動作であると言える。一方、また、「連れ」という言葉がある。この言葉は、ある物体が連続的に「連なる」という状態を「蔓」等に例えて、品詞化された言葉であろう。
日本語の「タム」(回・曲)という言葉は、「廻る」とか「曲げる」ことを表す動詞である。即ち、円形の動作を表す言葉であるが、それに、また、「タム」(溜・貯)というもう一つの言葉があるが、これは、物を「積み重ねる」ことを表す動詞である。これらに比して、「タマ」(玉・球・霊)という言葉があるが、これは、主に円球形を表している名詞である。前述の動詞、「タム」(回・曲)は、平面的な動作を表しているのに対してもう一つの動詞、「タム」(溜・貯)と、この名詞は、立体的な体積を表しているのがその違いである。
それはともかく、この動詞と名詞等は、その音義から推測してみると、両方の語は、深い関係があることばであることは、疑問の余地がないようである。
以上のように、「クシ・クスシ」から派生した言葉「串・櫛・髪・薬・酒・楠」について、資料を交えながら考察してみようと思う。
二 「奇し」(クシ・クスシ)
聞きしごと まこと貴く 奇しくも
神さびをるか これの水島
(噂の通り実に貴く不可思議にも神々しくあることかこの水島は)
と、『万葉集』にあるように「奇し」は、人知の及びがたい神秘さを呈するさまや、霊妙、不思議な様子を意味する。「クスバシ」「アヤシ」を類義語としてもつが、「アヤシ」が不審さを主とするのに対し、「奇し」は畏敬する気持ちが強い。「クスバシ」もここからの派生と考えられ、上二段動詞「クシブ」も同じく派生語と考えられる。「霊し」と表記されることもある。
「奇し」から派生した言葉
串
斎串立て 神酒据ゑ奉る 神主の
うずの玉陰 見ればともしも
(斎串を立て御神酒を捧げまつる神官たちの髪飾りのかずらは見るからにゆかしい)
と
クシ・クスの呪力
一 派生語
二 「奇し」
①串
②櫛
③髪
④薬
⑤酒
⑥楠
三 まとめ
参考文献
中村幸彦[ほか]編 角川古語大辞典第二巻 角川書店 1984
秋山虔編 王朝語辞典 東京大学出版会 2000
杉本つとむ著 語源海 東京書籍 2005
土橋寛[ほか]編 鑑賞日本古典文学第4巻歌謡Ⅰ 角川書店 1975
小島憲之[ほか]校注・訳 新編日本古典文学全集9 小学館 1996
佐竹昭広[ほか]編 新日本古典文学大系19 岩波書店 1993
角林文雄著 『日本書紀』神代巻全注釈 塙書房 1999
西宮一民校注 古事記 新潮社 1979
日本語語源研究会編 語源探求4 明治書院 1994
一 派生語
日本語の「ツル」という名称に触れる場合、鶴、蔓、弦、吊、釣、連など、様々な単語が浮かべられる。この「ツル」という名称について考えてみると、これらの中には、一言でいうと、「細長い」というものが互いに存在されているということに共通性があるようである。
まず、「鶴」を見てみる。鳥という動物は、一般的に、首が細長いが、特に、「鶴」は、他の鳥に比べて、その首「細長くて背...