河合隼雄は、「カウンセリングとは何か」という問いに対して、セラピストが自身の考え方を押しつけたり、説得したりするのではなくて、クライエントの気持ちを受け入れていく中で、クライエント自身の自主性、クライエント自身の考え、クライエント自身の体験というものを大切にしながら、その人が変化していくのを助けることであると述べている。本論では、教育現場での経験を元に、カウンセリングのあり方について考察している
「カウンセリングとは何か」
河合隼雄(1998)は、著書『カウンセリング入門』のなかで、カウンセリングとはセラピストが自身の考え方を押しつけたり、説得したりするのではなくて、クライエントの気持ちを受け入れていく中で、クライエント自身の自主性、クライエント自身の考え、クライエント自身の体験というものを大切にしながら、その人が変化していくのを助けることであると述べている。昨今、教育現場でも「カウンセリングマインド」という言葉が浸透し、教師一人ひとりが教育相談の考え方を持ち、受容的・共感的態度で子どもと接することが求められるようになった。自分も学校現場で子どもの話を聴いて、一人ひとりの思いを大切にするようには努めてきたつもりではあったが、本書を通して人の話を「聴くこと」の難しさを痛感し、改めて自身の行いを振り返る機会となった。以下に、自分は人の話を聴いていないと気づいた点をいくつか挙げてみたい。
第1に、自分は相手から悩みを打ち明けられたときに、その問題解決にばかり注意がいくという点である。本書では、女子生徒どうしのいざこざを聞いた教師が、それを何とか解決しようと頭をひねるも、実はその翌日...