マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』によって、資本主義の発展過程においてカルヴァンの予定説にもとづくプロテスタントの精神が重要な役割を果たしたという主張を展開してみせたことは非常にショッキングであった。それは特に社会学の世界に多大な影響を与え、論争を巻き起こした。しかしこのウェーバーの主張は、その表面だけを取られて誤解されることが非常に多かった。そこで今一度、このウェーバーの主張について再確認しておきたい。
プロテスタント宗教革命以前のヨーロッパ世界において、
ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の解釈
ドイツの社会学者マックス・ウェーバーの著作である『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は、日本ではしばしば「プロ倫」の略称で引用される著名な論文である。ウェーバーが本論文によって、「資本主義の発展において、カルヴァンの予定説にもとづくプロテスタントの精神(合理性)が重要な役割を果たした」という主張を展開したことは衝撃的であった。この論は特に社会学の世界に多大な影響を与え、論争を巻き起こした。しかしこのウェーバーの主張は、その表面だけを取られて誤解されることが非常に多かったのも事実である。そこで今一度、このウェーバーの主張について整理することが本レポートの目的である。
プロテスタント宗教革命以前のヨーロッパ世界において、キリスト教というのは、ウェーバーがそれを「儀礼的」「非日常的」と表現したように、ミサへ通い、免罪符を買うことによって人々は救われると考えられていたものであった。そのような状況下にあって極めて革新的な教義を展開してみせたのがカルヴァンであった。カルヴァンの予定説は、人が天国へ行くか、あるいは地獄へ...