フランスでは、封建的君主国家の成立とカトリック教会の圧力の下に女性の地位は長い間低下していた最初にジェンダー論が沸き起こったのは14世紀である。当時、聖職者によって女性に不当な非難が加えられていたことに対して、クリスチーヌ・ド・ピザンという詩人が多くの著作で女性を弁護したのだ。このような事例はごく少数であり、状況は17世紀まで続いた。ところが、18世紀にはいると宮廷やサロンで活躍する女性が増え始めた。それにしたがって女性自身によって権利の主張が行われたのだが、これが社会運動につながっていくのはフランス革命期になってからのことである。というのは、この時期は依然としてこのような女性は特権的少数派であり、夫やパトロンの財力や社会的地位に依拠していたからである。
フランス革命には多くの女性が参加した。とりわけ、1789年10月5日のヴェルサイユ行進に7000人もの女性が参加したことは有名である。これにともない、家族法における女性の権利は伸長したものの、参政権などは認められず、さらには「ナポレオン法典」によって女性の地位は決定的に低下した。
19世紀には第一帝政・7月革命・2月革命・第二帝政・パリコミューン・第3共和制など革命やクーデターによって体制がめまぐるしくかわり、女性たちの運動は絶えず抑圧されてきた。ところが大きな転換が訪れた。1830年代に産業革命が起こったことで女性労働者が増え、社会主義者の影響もあり、フェミニズムの思想や運動が粘り強く行われた。
そして20世紀初頭にはフェミニズム運動の全盛期を迎える。フェミニストの国際提携の生まれ、2つの世界大戦で女性が大きく社会進出をしたことも要因の一つとなり、教育や労働の面で多くの権利を獲得していき、ついに1944年には女性参政権が成立したのだ。70年代には、女性たちの権利はイギリスやアメリカのそれに並んだのだ。
第一章
この本は、フランス・イギリス・アメリカ・ドイツ・ロシアにおけるジェンダーについて書かれているが、今回はもっとも主要と思われるフランス・イギリス・アメリカの3カ国について主にまとめたい。ではまず、フランスからはじめていこう。
① フランスについて
フランスでは、封建的君主国家の成立とカトリック教会の圧力の下に女性の地位は長い間低下していた最初にジェンダー論が沸き起こったのは14世紀である。当時、聖職者によって女性に不当な非難が加えられていたことに対して、クリスチーヌ・ド・ピザンという詩人が多くの著作で女性を弁護したのだ。このような事例はごく少数であり、状況は17世紀まで続いた。ところが、18世紀にはいると宮廷やサロンで活躍する女性が増え始めた。それにしたがって女性自身によって権利の主張が行われたのだが、これが社会運動につながっていくのはフランス革命期になってからのことである。というのは、この時期は依然としてこのような女性は特権的少数派であり、夫やパトロンの財力や社会的地位に依拠していたからである。
フランス革命には多くの女性が参加した。とりわけ、1789年10月5日のヴェル...