【詩形・韻字】
七言絶句(金・陰・沈)
【通釈】
春の夜は、ほんのひと時が千金の値打ちがあるほど素晴らしい。
花は清らかな芳香を漂わせ、月は薄雲がかかって朧にかすむ。
たかどのからにぎやかに漏れていた歌や笛の音も、今やかすかに聞こえるばかり。
人気のない中庭にブランコがひっそり垂れ下がり、夜はふけていく。
【語釈】
春宵―春の夜。
一刻―古代の水時計の単位で、一昼夜を百等分した時間。一刻はほぼ十五分。「ひととき」とするのが通例。
千金―非常に高価な例え。
陰― 曇ること。月有陰で朧月の状態をいう。
「陰」は「日差し」の意もあり、転じて「月光がさす」と解釈するものもあり。
歌管―歌声と管弦の音。音楽。
楼台―うてな。たかどの。二階以上の臺。
細細―ささやかなさま。かぼそく聞こえるさま。
鞦韆―ブランコ。もっぱら女子の遊びに用いた。春の遊びで『天宝遺事』に玄宗皇帝が寒食の日(冬至後一〇五日目の日)に宮女たちを鞦韆で遊ばせ半仙戯(半ば仙人になるような気分がすること)とよんだことがみえる。
院落―中庭
沈沈―時がしずかに過ぎていくさま。ここでは夜が更けていくさま。
【解釈】
「春宵一刻直千金」について
?花の清らかな香り、おぼろ月が人々を清遊にいざなう。遊ぶ人にとって時が千金。
?春の夜更け(花の香り、朧月)を味わい、楽しむ作者にとって千金。
?「一笑千金」(=「美人の笑ひの得難いことにいふ」『大漢和辞典』)の成句をほのめかす。
蘇東坡
春夜 春夜
春宵一刻直千金 一刻 千金
花有清香月有陰 花に 有り 月に 有り
歌管楼台声細細 歌管 楼台 声 細細
鞦韆院落夜沈沈 鞦韆 院落 夜 沈沈
【詩形・韻字】
七言絶句(金・陰・沈)
【通釈】
春の夜は、ほんのひと時が千金の値打ちがあるほど素晴らしい。
花は清らかな芳香を漂わせ、月は薄雲がかかって朧にかすむ。
たかどのからにぎやかに漏れていた歌や笛の音も、今やかすかに聞こえるばかり。
人気のない中庭にブランコがひっそり垂れ下がり、夜はふけていく。
【語釈】
春宵―春の夜。
一刻―古代の水時計の単位で、一昼夜を百等分した時間。一刻はほぼ十五分。「ひととき」とするのが通例。
千金―非常に高価な例え。
陰― 曇ること。月有陰で朧月の状態をいう。
「陰」は「日差し」の意もあり、転じて「月光がさす」と解釈するものもあり。
歌管―歌声と管弦の音。音楽。
楼台―うてな。たかどの。二階以上の臺。
細細―ささやかなさま。かぼそく聞こえるさま。
鞦韆―ブランコ。もっぱら女子の遊びに用いた。春の遊びで『天宝遺事』に玄宗皇帝が寒食の日(冬至後一〇...