『わが国の地形の特色と形成過程を概観せよ。次にひとつの県(都道府)を選び、そこに分布する地形の特色を詳述せよ。』
わが国の地形の特色は、国土の約60%が山地で占められているところである。そして、山地と山地の間を埋めるような形で離れ離れに平野や盆地が分布している。
わが国の山地は太平洋をめぐる造山帯(変動帯)の一部をなしており、見方によれば、弧状の日本列島全体を、太平洋の底からそびえる大山脈の海上部分とみることもできる。一方、平野や盆地は山地と山地の間を埋めるような形で分布している。日本の山地や平野は、大陸地域の地形やイギリスのような島国の地形に比べてもはるかに小さく、山地と平野・盆地は交互に出現し、全体として布キレをはりあわせたような小さなモザイク構造を形づくっている。これが日本の地形の大きな特徴である。
では、このような地形はどのようにして形成されてきたのであろうか。
山地と平野・盆地の境目には大断層がよくみられるが、日本の山地は、関東・東北地方の沖の日本海溝で太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込む際に強い力を受け、この応力を受けて生成された逆断層や横ずれ断層によって形成されたものである。太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込んでいく理由は、太平洋プレートの密度が北アメリカプレートの密度に比べ大きいためである。そして、逆断層は南北方向のものが多く、山々を隆起させる。火山以外の山地の多くは逆断層によって形成されたものである。日本列島では他にも複数のプレートが集まっており、太平洋側のみならず、大陸側からも強い影響を受けている。日本の地形が小さなモザイク構造を形成しているのは、このような山地のでき方に由来しているのである。
もう少し具体的に述べると、日本列島では、第三紀以前に三回の造山運動が知られている。それによって列島の骨組みが形成された。
まず、最初の造山運動は本州造山運動とよばれる運動で、この造山運動によって西南日本の骨格がつくられて中央構造線が誕生した。そして、次の造山運動は日高造山運動で、本州造山運動をうけた地域の外側の地向斜に発生し、主に日高山脈の地質構造をつくり出した。そして、その日高造山運動をうけた地域が隆起し、東北地方の西側に堆積地域ができ、グリーンタフが堆積した。この地層が変位して、隆起し奥羽山脈や出羽山地となったのである。グリーンタフ造山運動である。
そしてその後、この準平原を破壊するような形で島弧運動がおこったのである。日本の現在の地形の形成過程はこの島弧運動とよばれるものに由来する。この運動は第四紀の地殻変動である。日本列島ではこのころ断層を伴った地塊運動が激しくなり、各ブロックの範囲、またはブロックごとの高度差などがはっきりあらわれてきた。ブロックの急激な隆起と、それに伴い強められた侵食作用により山地は形成される。一方、沈降したブロックでは、隆起ブロック(山地)から供給された土砂による埋積が進行し、その結果として、現在みられるような平野・盆地が形成されたのである。このように山地と平野・盆地の形成は表裏一体の関係であり、そのうえ、両者の形成が新しいということも日本の地形の特色である。
次に山地の侵食についてみてみる。地殻変動により内陸部で急激に高度を高めたわが国では、谷の勾配は大陸地域に比べるとはるかに急であることが多い。そして世界的にみてもわが国の降水量は多く、集中豪雨の発生頻度も高い。その結果、多量の降水が急勾配の谷を「滝」のように一気に流下するため、山地の削剥量は全体的にヨーロッパなどに比べて高いもの
『わが国の地形の特色と形成過程を概観せよ。次にひとつの県(都道府)を選び、そこに分布する地形の特色を詳述せよ。』
わが国の地形の特色は、国土の約60%が山地で占められているところである。そして、山地と山地の間を埋めるような形で離れ離れに平野や盆地が分布している。
わが国の山地は太平洋をめぐる造山帯(変動帯)の一部をなしており、見方によれば、弧状の日本列島全体を、太平洋の底からそびえる大山脈の海上部分とみることもできる。一方、平野や盆地は山地と山地の間を埋めるような形で分布している。日本の山地や平野は、大陸地域の地形やイギリスのような島国の地形に比べてもはるかに小さく、山地と平野・盆地は交互に出現し、全体として布キレをはりあわせたような小さなモザイク構造を形づくっている。これが日本の地形の大きな特徴である。
では、このような地形はどのようにして形成されてきたのであろうか。
山地と平野・盆地の境目には大断層がよくみられるが、日本の山地は、関東・東北地方の沖の日本海溝で太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込む際に強い力を受け、この応力を受けて生成された逆断層や横ずれ断層によって形成さ...