「国木田独歩作『忘れ得ぬ人々』を読み、そこに表現されている人間認識及び人生観について述べよ。」
主人公の大津は、「親とか子とかまたは朋友知己そのほか自分の世話になった教師先輩のごときは、つまり単に忘れえぬ人とのみはいえない。忘れてかなうまじき人といわなければならない、そこでここに恩愛の契りもなければ義理もない、ほんの赤の他人であって、本来をいうと忘れてしまったところで人情をも義理をも欠かないで、しかもついに忘れてしまうことのできない人がある。」と言っている。では、なぜ「赤の他人であり、本来は忘れてしまっても問題のない人」の中に忘れてしまうことができない人がいるのであろうか。
「国木田独歩作『忘れ得ぬ人々』を読み、そこに表現されている人間認識及び人生観について述べよ。」
主人公の大津は、「親とか子とかまたは朋友知己そのほか自分の世話になった教師先輩のごときは、つまり単に忘れえぬ人とのみはいえない。忘れてかなうまじき人といわなければならない、そこでここに恩愛の契りもなければ義理もない、ほんの赤の他人であって、本来をいうと忘れてしまったところで人情をも義理をも欠かないで、しかもついに忘れてしまうことのできない人がある。」と言っている。では、なぜ「赤の他人であり、本来は忘れてしまっても問題のない人」の中に忘れてしまうことができない人がいるのであろうか。
まず、この物語の中で大津が「なぜこれらの人々を忘るることができないかという、それは憶い起こすからである。」とし、「要するに僕は絶えず人生の問題に苦しんでいながらまた自己将来の大望に圧せられて自分で苦しんでいる不幸せな男である」と言っている。つまり、「人生の問題」と出てくるが、これこそ大津が出会う「本来は忘れてしまっても問題のない人の中に忘れてしまうことができない人」がいる答えが示されているのではなかろうか。大津...