第1設題
ロマン主義とは何か。またその担い手たちはどういう意味でロマン主義的なのかをそれぞれ述べよ。
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18世紀末から19世紀初頭にかけて、イギリスでは産業革命、フランスではフランス革命が起こっていた。このころの社会的変化に後押しされ、ワーズワス(1770-1850)、コウルリッジ(1772-1834)を皮切りに ロマン主義 文学が花開く。ロマン主義は詩を中心として、 バイロン (1788-1824)や キーツ (1795-1821)、 シェリー (1792-1822)へと受け継がれていった。
産業革命の波が大きくなり、イギリスの社会情勢も大きく変わってくると、特にこの頃の詩人たちは産業革命による機械の導入による自然の破壊や物質主義に翻弄する人々の姿を見て心を痛める。人口は都市に集中し、農村は衰退し貧困も目立つようになると、エリオット(1781-1849)は、1815年の穀物輸入を制限する穀物条例廃止運動にたいして、『穀物条例歌集』を出し、労働者の間で広く読まれた。イギリスのロマン主義は、古典主義の理性尊重に対する感情の重視、法則偏重に反発する自由の主張、都会趣味に変わる自然への愛などいろいろな考え方がなされているが、このように産業革命と重商主義への反動として捉えることも出来るであろう。
ロマン主義に相反するものとして考えられることの多い古典主義の特徴が法則の肯定であるのに対し、ロマン主義の特徴は法則の否定である。ロマン主義は、古典主義に対する文学上の革命であった。よって、ロマン主義にとって法則はすべて悪であり、個人の想像力にのみ従う制限のない自由を主張するものであった。そのため、ロマン主義の作家たちがある法則に沿ってそれぞれの作品を書き上げたということはないのであるが、いくらかの共通項を見出すことはできる。
第一に、中世趣味とか異国情調と言ったものを題材にする時間的空間的に遠いものに対する憧れがあることである。第二に、自然は神秘化され超自然は自然のものと化す自然と超自然に対する驚異と熱愛がある。第三に、当時の縛りから脱する革命的精神である。
ブレイク(1757-1827)は、個人を束縛するものはすべて悪であると考え、産業革命により既製品を大量に機械生産することは個人の自由な発想と手仕事を奪うもの以外の何者でもないと考えた。作品の中で、彼は自然界の事物を象徴化する卓越した才能を発揮した。また、詩集はすべて本文および挿絵を彼の妻とエッチングで彫って印刷していたところに、文学と美術を結合させた複合芸術性を見出すことが出来るしイギリス・ロマン主義の複合性の一種先駆と見ることもできるのである。
ワーズワス(1770-1850)とコウルリッジ(1772-1834)の共著である『抒情歌謡集』の第二版(1800)でワーズワスは、「この主題<読者の理解を啓発し、読者の愛情を強化し鈍化するという性質と関係をもつ対称を描き、またそういう情感を表現すること>は、実際重要である」とし、作家たちが、庶民の日常生活の中から題材を選び、彼らの使う言葉で著すことの意味を強く主張しているのである。ここでのワーズワスの役割は、多くの文学者が多用する美辞麗句や正確な描写が故の空虚な表現を用いるのではなく、素朴で人間味のあり民衆が用いる言葉で綴るという試みにあった。 ワーズワスの友人であったコウルリッジは、中世的背景を持つ物語詩「クリスタベル」(1816)を著した。美しい婦人の姿を借りた邪悪な魔女とその呪文にかかる美しい姫を中心とする物語詩で、中世的な城から脱出するとい
第1設題
ロマン主義とは何か。またその担い手たちはどういう意味でロマン主義的なのかをそれぞれ述べよ。
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18世紀末から19世紀初頭にかけて、イギリスでは産業革命、フランスではフランス革命が起こっていた。このころの社会的変化に後押しされ、ワーズワス(1770-1850)、コウルリッジ(1772-1834)を皮切りに ロマン主義 文学が花開く。ロマン主義は詩を中心として、 バイロン (1788-1824)や キーツ (1795-1821)、 シェリー (1792-1822)へと受け継がれていった。
産業革命の波が大きくなり、イギリスの社会情勢も大きく変わってくると、特にこの頃の詩人たちは産業革命による機械の導入による自然の破壊や物質主義に翻弄する人々の姿を見て心を痛める。人口は都市に集中し、農村は衰退し貧困も目立つようになると、エリオット(1781-1849)は、1815年の穀物輸入を制限する穀物条例廃止運動にたいして、『穀物条例歌集』を出し、労働者の間で広く読まれた。イギリスのロマン主義は、古典主義の理性尊重に対する感情の重視、法則偏重に反発する自由の主張、都会趣味に変わる自然へ...