? 問題の提起
日本の離婚は約90%が協議離婚であり、当事者間で合意が成立すれば裁判所などの関与を要せずに離婚することができる。当事者だけでは話がつかないと裁判で離婚判決を求めることになるが、離婚訴訟には調停前置主義がとられているのでまず調停にかけられる。全離婚数の約9%は、家庭裁判所の調停手続を通じて合意が成立するか、審判離婚によるものである。それでも当事者間に合意が成立しなかった、全離婚数の約1%が訴訟提起されて裁判離婚として成立することになる(1)。
民法770条1項には裁判離婚の原因が挙げられており、離婚を請求するものはこの存在を立証して離婚を求める。そこで問題となるのが5号の、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という規定である。これは一般的破綻主義を宣言したものと理解されており(2)、結婚生活が完全に破綻してしまって、回復の見込みがないときは、原告はこれを主張して離婚を求めることができる。しかし、このとき原告が自ら結婚生活の破綻の原因を作った有責配偶者である場合(有責配偶者からの離婚請求のケースのほとんどは、不貞行為により婚姻を破綻させ、その不貞の相手女性と同棲している夫からの離婚請求である)、この有責配偶者が5号の規定を利用して離婚を請求することが許されてよいのか。許されてはいけないとするのが消極的破綻主義といわれる立場で、昭和27年以来の最高裁の立場であった。これに対して、たとえ有責配偶者による離婚請求であっても破綻した婚姻関係を解消することは許されてよいと考えるのが積極的破綻主義の立場である。
有責配偶者からの離婚請求
目次
Ⅰ問題提起
Ⅱ本論
第1章 770条の意義
1、旧法との比較
2、成立過程での議論
第2章 学説及び判例
1、昭和20年代の判例・学説
2、昭和30年代の判例・学説
3、昭和40年代・昭和50年代の判例・学説
第3章 最高判昭和62年9月2日大法廷判決
1、事案
2、有責配偶者の離婚請求が認められた理由
3、最高裁の示した要件
第4章 最高裁62年判決以後の判例
1、その後の最高裁・下級審の判断
2、3要件は貫徹されたのか
Ⅲ結び
Ⅰ 問題の提起
日本の離婚は約90%が協議離婚であり、当事者間で合意が成立すれば裁判所などの関与を要せずに離婚することができる。当事者だけでは話がつかないと裁判で離婚判決を求めることになるが、離婚訴訟には調停前置主義がとられているのでまず調停にかけられる。全離婚数の約9%は、家庭裁判所の調停手続を通じて合意が成立するか、審判離婚によるものである。それでも当事者間に合意が成立しなかった、全離婚数の約1%が訴訟提起されて裁判離婚として成立することになる(1)。
民法770条1項には裁判離婚の原因が挙げられており、離婚を請求するも...