自己概念の同定
―「自己イメージ」の歪みの検証―
実施日 平成18年5月15日
序 論
人間は自分の本当の姿を知りたいという欲求(自己確証動機)を持つと同時に、「自分が価値ある人間である」と信じたいという欲求(自己高揚動機)を持っていると考えられている。このような動機の存在によって、人間は自分を肯定的な方向へ歪めてしまう、という事実が、実験的に明らかになってきている。このように、自分をポジティブな方向へ歪めて認知する傾向を、Taylor(1989)はポジテイィブ幻想(Positive illusion)と名づけている。道徳性、正直性、友好性、知性、ねばり強さ、偏見の少なさ、対人能力、他者に対する気づかい、他社に対する親切、利他的傾向、善良、リーダーシップ能力などに関しては、自己イメージがポジティブな方向へ歪むことを示す実験結果が得られている。しかし、自己イメージの歪みは、必ずしもポジティブな方向だけではなく、ネガティブな方向へ歪む人もいて、個人差のあることが見出されている。この自己認知の歪みには、「自尊心」の高低が関わっていると考えられており、歪みがポジティブな方向へ大きく歪むのは、自尊心の高い人たちに顕著な傾向とされている。しかし、全体的には自尊心の低い人たちもポジティブな方向へ歪む傾向があり、その程度が高い人達より少ない(量的にも、人数的にも)ことを示す研究もある。また、文化的な差異(個人主義的なのか集団主義的なのか)もそのような違いを生み出す要因である可能性も論じられている。本実験は、「自尊心」と「自己イメージ」の測定を行い、従来までの研究で見出されてる“歪み”が見出されるか否かを確かめ、そのような“歪み”が自尊心の高低とどのように関連しているかを検証することを目的とする。
実 験
1.「自尊心」の測定
2種類の質問用紙による測定法を使用する
Rosenberg, 1965
Cheek & Buss, 1981
2つの方法は、共に同じ「自尊心」を測定しているのであるが、両者は本当に同じ者を測っているかを実際に確かめる。
2. 自己イメージの測定
過去のこのテーマに関する研究で用いられてきた項目を中心にして選ばれた30項目
について、各被験者が自己判断を行う。様々な判断方法があるが、ここでは種類の2種類の測定方法を用いる。
評定法 : 各項目について、5段階で自己評定を行う。
2分法 : 各項目に対して、自分は「平均以上」なのか「平均以下」なのか で判断を求める。
それぞれの測定法の違いから、捉えられている測定内容にどのような違いがあるか。
実験の目的でもある「自己イメージの歪みに関して」測定法の違いはどのような影響を与えているか。目的のためにはどちらの方法がより望ましいかを、等を検証する。
手 順
(1) 2種類の「自尊心測定の質問紙」と2種類の「自己イメージ測定法」の各質問項目への回答を被験者全員が行う。
(2) 被験者の回答結果は、個人情報保護のために、匿名で集計される。
(3) 質問用紙の他に、結果集計のための提出用の記録用紙を配布。
結果の集計
集計用の質問紙を回収、それらをシャッフルし全員に1枚ずつ配布。
3グループに分かれて、集計
各グループで集計した結果のファイルをひとつにまとめ、クラス全体のデータ分析を行う。
最終的に集計された結果はサーバーからダウンロードする。
分析・検定
自尊心の測定 自尊心尺度1(Cheek&Buss 1981)、尺度2(Rosenberg,
自己概念の同定
―「自己イメージ」の歪みの検証―
実施日 平成18年5月15日
序 論
人間は自分の本当の姿を知りたいという欲求(自己確証動機)を持つと同時に、「自分が価値ある人間である」と信じたいという欲求(自己高揚動機)を持っていると考えられている。このような動機の存在によって、人間は自分を肯定的な方向へ歪めてしまう、という事実が、実験的に明らかになってきている。このように、自分をポジティブな方向へ歪めて認知する傾向を、Taylor(1989)はポジテイィブ幻想(Positive illusion)と名づけている。道徳性、正直性、友好性、知性、ねばり強さ、偏見の少なさ、対人能力、他者に対する気づかい、他社に対する親切、利他的傾向、善良、リーダーシップ能力などに関しては、自己イメージがポジティブな方向へ歪むことを示す実験結果が得られている。しかし、自己イメージの歪みは、必ずしもポジティブな方向だ
ではなく、ネガティブな方向へ歪む人もいて、個人差のあることが見出されている。この自己認知の歪みには、「自尊心」の高低が関わっていると考えられており、歪みがポジティブな方向へ...