意味記憶
実施日 平成18年4月17日
序論
意味記憶の構造及びその特徴について階層的ネットワークモデルにもとづき検討する。また、このモデルの限界に関しても議論する。
方法
実験参加者 大学生60名
刺激 3層からなる階層的ネットワークモデルにもとづき、二つの概念間の生物種に関する命題と概念とその関連属性に関する命題とがそれぞれ30文、計60文構成された。これらの命題は文の形で用いられた。これら30文には、主語と述語との間の階層レベルの差が0,1,そして2であるものが同数ずつ含まれていた。これら計60文は、実験参加者ごとにランダムな順序で呈示された。なお、各試行の開始時に凝視点として“+”記号が呈示された。
装置 (刺激の呈示や反応の収集、そして反応時間の測定には各自のノートパソコンを用いる)
手続き 実験は練習試行と本試行によって構成されていた。本試行は全部で60であった。各試行では、まず、ディスプレイ中央に凝視点が1s間呈示され、続いてこの凝視点が消え、直後にこの凝視点の位置を中心とした形で刺激文が1文呈示された。実験参加者の課題は、それぞれの文の真偽を判断し、真ならばキーボードにある“右のシフトキー”を、偽なら“左のシフトキー”を、できるだけ早く正確に押すことであった。刺激文の呈示開始時点から実験参加者の反応までの時間がミリ秒単位で測定された。
結果
階層レベルの差が大きいほど、反応時間も長く要した。いずれの階層レベルにおいても、刺激文の種類による平均反応時間の差は生物種に関する命題のほうが、関連属性に関する命題よりも短かった。刺激文のもととなる命題の真偽の違いによる反応時間の差はほとんどなかった。同階層レベルであっても、文の種類によって平均反応時間、標準偏差に顕著な差があった。刺激文の種類より、階層レベル、刺激文の種類、命題の真偽が同じであっても反応時間に差異があり、また、階層レベルが大きくても、階層レベルが小さい刺激文に対する反応時間よりも短いものがあった。
考察
1.全実験参加者のデーターを対象とし、階層レベル差別平均反応時間を表1及び図1に示す。更に刺激文に対する反応が正当であった場合のみのデーターを抽出し、同様に階層レベル差別の平均反応時間を表2及び図2に示す。表1では、階層レベルが0の場合の平均反応時間は1157.29(ms)、階層レベル差が1の場合は、1171.87(ms)、階層レベル差が2の場合は1227.92(ms)であり、階層レベル差が大きくなると、平均反応時間が長くなることがわかった。刺激文に対する反応が正当だった場合のみのデーターを抽出した場合にも階層レベルの差が大きくなれば、反応時間が長くなるという結果が得られた。また各階層レベル別に文の種類による反応時間の差異を図3に示す。いずれの階層レベルにおいても、属性に関する刺激文よりも生物種に関する刺激文に対する反応時間が短いことがわかる。このことから属性に関する情報は生物種に関する情報より下位に位置しており、階層レベルの差が大きくなればなるほど、その反応時間は長くなる。以上のことから意味記憶の階層ネットワーク構造モデルは支持されたと考える。
2.刺激文のもととなる命題の真偽による平均反応時間、更に各階層レベルに細分化した平均反応時間を表3に示す。刺激文のもととなる真偽の違いによる平均反応時間を比較すると、刺激文の命題が真の場合の平均反応時間は、1170.29(ms)であり、偽の場合は1211.09(ms)。このことから刺激文の命題が真であった場合のほうが、
意味記憶
実施日 平成18年4月17日
序論
意味記憶の構造及びその特徴について階層的ネットワークモデルにもとづき検討する。また、このモデルの限界に関しても議論する。
方法
実験参加者 大学生60名
刺激 3層からなる階層的ネットワークモデルにもとづき、二つの概念間の生物種に関する命題と概念とその関連属性に関する命題とがそれぞれ30文、計60文構成された。これらの命題は文の形で用いられた。これら30文には、主語と述語との間の階層レベルの差が0,1,そして2であるものが同数ずつ含まれていた。これら計60文は、実験参加者ごとにランダムな順序で呈示された。なお、各試行の開始時に凝視点として“+”記号が呈示された。
装置 (刺激の呈示や反応の収集、そして反応時間の測定には各自のノートパソコンを用いる)
手続き 実験は練習試行と本試行によって構成されていた。本試行は全部で60であった。各試行では、まず、ディスプレイ中央に凝視点が1s間呈示され、続いてこの凝視点が消え、直後にこの凝視点の位置を中心とした形で刺激文が1文呈示された。実験参加者の課題は、それぞれの文の真偽を判断し、真ならば...