親などによる児童虐待が、重大な社会問題として深刻化している今日において、「児童虐待防止法」は“自らの生存権を主張する”言葉を持たない児童(乳幼児)たちにとって、大きな意味をなしている。
ここでは、2000年5月17日の児童虐待防止法成立における背景と、その概要について述べていきたい。
あまり知られてはいないが、日本では1933(昭和8)年に「児童虐待防止法」が制定されていた。この法律は、14歳未満の子どもに対する虐待や著しい監護の怠慢を防止する目的で作られた
親などによる児童虐待が、重大な社会問題として深刻化している今日において、「児童虐待防止法」は“自らの生存権を主張する”言葉を持たない児童(乳幼児)たちにとって、大きな意味をなしている。
ここでは、2000年5月17日の児童虐待防止法成立における背景と、その概要について述べていきたい。
あまり知られてはいないが、日本では1933(昭和8)年に「児童虐待防止法」が制定されていた。この法律は、14歳未満の子どもに対する虐待や著しい監護の怠慢を防止する目的で作られた。「児童を保護すべき責任のある者」が児童を虐待またはネグレクトした場合は、地方長官が訓戒し、場合によっては保護責任者から児童を引き離して保護することができる、とされている。
国際連盟が採択した「婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約」の批准(1925年)などの流れをくむものだが、虐待そのものに対する処罰規定がなく、地方長官に対する法的な責任も定かではなく、ほとんど有効にははたらかなかった。
戦後、児童福祉法が制定されたのは1947年である。
当時は戦災孤児対策が法律の念頭に置かれていたが、虐待などを受けている児童を発見し...