日本の戦前の道徳教育について、まずは江戸時代から歴史的変遷をみていくことにする。
江戸時代においては、すべての子どもに平等に開かれた学校制度は存在せず、武士階級の子どもは藩校で、庶民階級の子どもは寺子屋で教育を受けていた。これらは複線型学校制度と呼ばれていたが、それぞれの階級ごとに異なった道徳教育が行われていた。この時代の道徳教育の特徴は、修身科が独立した教科として教えられるのではなく、教科書の内容の中に、またそれを教える教師の中に、道徳教育の教材が含まれていたことである。教育内容としては、朱子学を中心とする儒教的倫理観が藩校教育を支配し、庶民のそれは寺子屋の中だけでなく、家庭、地域社会という日常生活の中で自然と身についていくものであった。
明治時代の道徳教育は、明治元年の「五箇条の誓文」の中に求められる。1872年学制が発布され、その基本理念となった「被仰(おおせい)出書(だされがき)」において江戸時代の倫理は否定され、当時の文明開化の雰囲気を反映し、欧米の資本主義の倫理が導入されることで道徳教育観は変化している。
第二次世界大戦以前の日本の道徳教育について。
日本の戦前の道徳教育について、まずは江戸時代から歴史的変遷をみていくことにする。
江戸時代においては、すべての子どもに平等に開かれた学校制度は存在せず、武士階級の子どもは藩校で、庶民階級の子どもは寺子屋で教育を受けていた。これらは複線型学校制度と呼ばれていたが、それぞれの階級ごとに異なった道徳教育が行われていた。この時代の道徳教育の特徴は、修身科が独立した教科として教えられるのではなく、教科書の内容の中に、またそれを教える教師の中に、道徳教育の教材が含まれていたことである。教育内容としては、朱子学を中心とする儒教的倫理観が藩校教育を支配し、庶民...