目的
私たちは日常生活の中でさまざまな動作とスムーズに行っている。運動は,多くの場合,視覚的情報を適切に利用することによって遂行される。例えば本棚から本を取るとき,目を閉じて取りたい本を取ることができるだろうか?このことからわかるように本をとるためには手を目的の本まで動かさなければいけない。また,本を取るためには手の微妙な力加減もこの動作には必要である。このように,知覚した情報と体の運動を協応させることが必要な運動技能が,練習によって上達する過程を知覚運動学習(perceptual-motor learning)という。
運動技能獲得の効率性にかかわる大切な問題の1つに,訓練の転移(transfer of training)がある。転移とは先行の学習が後の技能学習に何らかの影響を与えることである。ここで取り上げる両側性転移(bilateral transfer)は,一方の手足で行った学習が他方の手足に影響する現象である。先行研究においては,Taylorらが系列課題において左手から右手への効率的転移を報告している。一方でParlowらは反転描写課題を用いた実験により右手から左手への効率的転移を報告しており,課題特性による転移の特徴が存在するものと報告している。では,鏡映描写課題を利き手で行ったあと,非利き手でも同様の課題を行った場合,利き手での練習効果が非利き手に実際に影響を及ぼしているのだろうか。
本実験では,訓練の転移の鏡映描写課題において,利き手での学習効果が,非利き手の運動遂行に転移するかどうかを,運動所要時間と逸脱数を指標として検討する。
方法
実験参加者 課題に対して未経験な,右利きの県内の大学生男子3名,女子14名,計17名であった。視力については,低い者は眼鏡,またはコンタクトであった。
実験計画 独立変数として,非利き手での学習のみを行う統制群1,第1〜2試行(プリテスト試行)と第13〜15試行(ポストテスト試行)のみを行う統制群2,プリテスト試行とポストテスト試行の間に利き手での学習を行う実験群の3群を設定する。従属変数として,運動の所要時間と逸脱数を計測する。
目的
私たちは日常生活の中でさまざまな動作とスムーズに行っている。運動は,多くの場合,視覚的情報を適切に利用することによって遂行される。例えば本棚から本を取るとき,目を閉じて取りたい本を取ることができるだろうか?このことからわかるように本をとるためには手を目的の本まで動かさなければいけない。また,本を取るためには手の微妙な力加減もこの動作には必要である。このように,知覚した情報と体の運動を協応させることが必要な運動技能が,練習によって上達する過程を知覚運動学習(perceptual-motor learning)という。
運動技能獲得の効率性にかかわる大切な問題の1つに,訓練の転移(transfer of training)がある。転移とは先行の学習が後の技能学習に何らかの影響を与えることである。ここで取り上げる両側性転移(bilateral transfer)は,一方の手足で行った学習が他方の手足に影響する現象である。先行研究においては,Taylorらが系列課題において左手から右手への効率的転移を報告している。一方でParlowらは反転描写課題を用いた実験により右手から左手への効率...