主語を先行詞にした非限定の関係詞文句と分詞構文とを比較考察しなさい。
主語を先行詞とした非限定関係詞文句と分詞構文の比較をする上で、まず非限定関係詞文句と分詞構文について明らかにしていく。
学校文法では、「関係詞」の章では、「関係詞の前にコンマがなく、関係詞以下の節が先行詞を修飾・限定している場合を「限定用法」と呼ぶのに対して、関係詞の前にコンマがあって、以下の節が先行詞について補足・説明している場合を非限定用法と呼ぶ。」と説明している。しかしこの様な解説により、「限定文句には様ざまな種類があるが、非限定文句は一様である。」といった誤信を招いていると言える。本稿では、非限定関係詞文句は、少なくとも3種類に分類されるべきであると考える。以下に非限定関係詞文句の3用法を考察する。
1)挿入句的非限定関係詞文句
先行詞の後に挿入され、その内容を描写する。挿入句的非限定関係詞文句において、文の主語を先行詞とした場合、「譲歩」「理由」等の「含意」が生じ、意義上副詞文句相当句になることが多い。
2)継続的非限定関係詞文句
先行詞を受けてさらに話を進めていく文句。それぞれに独立した単一の文句、又は「等位文句」に相当する。
3)分離関係詞文句
先行詞を含む前の文から分離され、関係詞が次の文の文頭に立つ。
次に、分詞構文について考察する。学校文法の説明の根拠となるに近いものにクロイシンハとその弟子のザンドヴォルトの定義がある。それによると「現在分詞句は、主として、時、理由、付帯状況表す副詞文句相当句を成す場合があり、更に、条件、譲歩、手段などの意を言外に含む場合もある。」としている。その際、「分詞句と、分の他の部分との間に明白な途切れがある。」とも指摘している。また、スウィートは、’Here are my letters announcing my intention to start.’を例に挙げ、’announcing’は関係詞文句相当句であり、後位形容詞句とも見られるとした。そして、分詞句とその被修飾語の間に休止や音調の変化があれば、分詞句は文を修飾しうるとした。更に、’Seeing a crowd, I stopped.’を例示し、’When I saw’ とも‘Because I saw’ともなる「文修飾副詞」として働くことを示し、’Seeing a crowd’が「分詞構文」に当たることを明らかにした。
ここまで、非限定関係詞文句と分詞構文についての概要を述べたが、主語を先行詞とした両者を比較する際に、1)で述べた「挿入句的非限定関係詞文句」が関係してくる。なぜなら、先述したように、「挿入句的非限定関係詞文句」には「理由」「譲歩」、「時」などの含意が含まれ、つまり文句全体が副詞文句相当語句になることが多いからである。
一般に、連体的修飾語が非限定的に使われると、それが一種の挿入句となり、副詞的な意味を言外に含むようになり、それが主語を修飾する場合は、主語と述語の関係を通じて文全体にかかることになる。非限定的連体修飾語が副詞相当の意味を含むということは、主語を先行詞とする非限定的関係詞文句の場合はそれが顕著に現れる。つまり、上述したが、スウィートは「分詞構文」は「関係詞文句相当句」であると指摘しているので、「分詞構文」においても同様のことが言えるのである。
以上の、「主語を先行詞とする非限定関係詞文句」と「分詞構文」を比較する妥当性を踏まえ、いくつかの観点から例文を挙げながら両者の共通性、相違性を考察することで比較していく。
①含み
『主語を先行詞にした非限定の関係詞文句と分詞構文とを比較考察しなさい。』
まず、非限定関係詞文句から見ていくこととしよう。
「限定文句には様々な種類があるが、非限定文句は一様である」という誤った情報が、日本の英語教育の現場で、学生・生徒間にも教員の中にもあたかも真実であるかのようにまかり通っている現状がある。
しかしこれは誤りであり、非限定関係詞文句は少なくとも3種類に分けて考えられるべきものである。その3種類を、以下に記す。
(1)挿入句的非限定関係詞文句
先行詞の後に挿入され、その内容を描写する非限定関係詞文句。特に、文の主語を先行詞とした「挿入句的非限定関係詞文句」では、下に挙げた例のように「譲歩」や「理由」等の「含意(言外の意味)」が出て、意義上で副詞文句相当語句になることが多い。
ex)Less than an hour later one of the housemaids, who of course was quite aware that the Squire’s illness was serious, was surprised to hear a bold and decided step descending the stairs. (T. Hardy)
ここでのwho = because she…
(2)継続的非限定関係詞文句
非限定の関係詞文句の中には、先行詞をうけてさらに話を進めていく文句もある。このようなタイプの関係詞文句は、例のようにそれぞれに独立した単一の文句、または「等位文句」に相当する。
ex)He was Richard Phillotson, who had recently removed from the mixed village school to undertake a large boy’s school in is native town of Shaston, which stood on a hill sixty miles to the south-west as the crow flies. (T. Hardy)
(3)分離関係詞文句
等位接続詞がその前の要素から分離されて次の文の先頭に立つ「分離接続詞」になることがあるように、非限定の関係詞文句も、先行詞を含む前の文から分離されて、関係詞が次の文の文頭に立つ「分離関係詞文句」になることがある。
ex)He was, in some paralyzing way, conscious of his own defencelessness, though he had all the defence of privilege. Which is curious, but a phenomenon of our day. (D. H. Lawrence)
以上の3種類の例から、非限定関係詞文句とて一様ではないことがわかった。
では次に分詞構文について、詳しく述べることとする。
分詞構文が「構文」として捉えられ、その用法が重視されてきたことは、英語教育上非常に有益である反面、英語の真の理解の妨げとなっている面もある。この誤解を生んだ原因は、分詞構文の特殊性に気をとられすぎて、分詞構文が「分詞句」であることを忘れてしまうことに端を発しているようである。分詞(participle)はその語義通り、「動詞の性質と形容詞の性質をparticipate(=take part)する(一部分ずつ持つ)ことば」である。