刑事訴訟法は、審判対象の設定や変更、証拠の申し出などを当事者に委ねる、当事者主義訴訟構造を採用している。建前として、被告人と検察官は対等な立場に立つことになるが、実際には両者には歴然とした差がある。検察官は「公の代表」として、背後には強大な国家権力が控えている。被告人は強制処分によって捜査機関に身柄を拘束され、証拠物を押収されるなどの社会的不利益を受ける。そして、決定的な違いが法律の知識である。被告人は法律の知識について無知である場合がほとんどである。この両者が直接対決した場合の結論はおのずと見えてくる。このような裁判は公平な裁判と言えない。そこで、憲法は被告人に弁護人選任権を与えて、検察官との間で十分な攻撃・防御ができるように34条と37条によって弁護権を保障した。実質的な当事者の平等を図っており、このような考え方を「実質的当事者主義」と呼ぶ。
まず、憲法34条は前段において弁護権がなければ身柄拘束されないことを保障する。捜査は検察官の公判準備であり、捜査段階での証拠収集活動により、公判の結果が大きく左右される。公判を有利に進めようとすると、厳しい捜査活動が行われ、黙秘権などの被...