胃・十二指腸潰瘍の薬
【はじめに】 胃潰瘍や十二指腸潰瘍(両者をまとめて消化性潰瘍と呼ぶこともあります)は、普段私たちが食物を摂取したときに、これを消化するために分泌される胃酸(塩酸)やペプシン(タンパク質を分解する酵素)によって、胃や十二指腸の内壁が障害をうけてしまうような状態で、いわば自己消化してしまっている状況の疾患です。 どうしてこのような状況におちいってしまうのかを考えるにあたって一つの説があり、「バランス説」と呼ばれています。 胃には攻撃因子と防御因子の二つがあり、攻撃因子というのは先に述べた胃酸やペプシンなどの消化酵素で、特に胃酸では胃壁を簡単に溶かしてしまうような強力な塩酸が分泌されています。一方、防御因子とは胃壁の表面に粘液を分泌させて、胃酸やペプシンなどから文字どおり胃壁を守る働きを持つ因子です。 バランス説というのは、この攻撃因子と防御因子がバランスが崩れてしまったために潰瘍ができてしまうという考え方で、例えば攻撃因子である胃酸が過剰に分泌されて防御因子では対応できなくなってしまったとか、あるいは逆に、防御因子が低下したために普通の攻撃因子に対する防御機構すら働...