触法患者の退院審判について
1、退院審判とは
「退院審判」とは、心神喪失や心神耗弱と診断され不起訴や無罪になった触法患者の精神病院への入院を裁判所が判断し、入院治療を受けた者が裁判所に退院の申請をし、その申請を受けて、退院が相当であるかどうかの審判を裁判所が行うものであり、アメリカの多くの地域で実際に運用されている。
この審判は、患者本人、主治医、精神科医、地域住民の代表である地方検事、保護監察機関、心理学者など、さまざまな立場の者が証言台に立ち、「病気は回復したのか」、「将来の再犯のおそれはないか」「退院は相当か」などについて、賛成派、反対派に分かれ、公開の場で激しい議論を展開し、これをもとに裁判所が、退院の可否について最終決定を下す仕組みになっている。
アメリカでは、この「退院審判」を導入してから、再犯率が21パーセント減った地域もあり、実効性のあるものとされている。
2、退院審判についての評価
このような「退院審判」導入については、「誤って再犯の恐れがあると判断され、長期入院となるケースが必ず出る」、「社会復帰のための医療を掲げる新制度が治安のための長期拘禁につながるのではないか」、「精神医療の素人である裁判官が触法患者の退院の可否を決定することは妥当でない」、「心神喪失者等に対し、治療の必要性を理由に一般人にはなされない刑罰類似の不定期の拘禁を課すものである」、「精神障害者の人権を著しく侵害し、健常者との差別を助長するものであり、再犯のおそれを理由に処遇対象者を強制入院させるものである」、「本質は保安処分となんら異ならない」との多くの批判がある。
しかし、このような問題については、裁判所が公平な目で純粋に触法患者の精神病が治癒されたのかを判断すること、またそのような制度の確立によって、避けられうるし、触法患者側にとっても、病気が完治していない状態で社会に放り出され、治療等に関し国家等が全く関与しないということは、欲するところでないし、望ましいものではなく、「退院審判」導入は必要なものであると考える。以下にその理由について述べていく。
第一に、「退院審判」は、患者が審理に加わり自分の状態や退院について供述したりもすることから、自らが犯した事件について反省の機会になり、再犯防止にもつながる。また、本人を審理に加えることで、主治医のみの判断でなく、本人の状態を公開の場で様々な立場の者が知ることができ、本当に病気が完治したのかを判断する上でも有効なものである。
第二に、上記のように、退院審判について、精神医療の素人である裁判官が判断するのは、妥当でないとの批判があるが、医師のみでは、患者自身の状態しか見ることができないのに対して、裁判官が判断の主体となることで、患者の病気と本人が犯した事件等との関連性等をも詳しく判断できるし、これまでの従来型の医師のみの判断では患者の社会復帰や地域の安全を考慮したものとならなかったのに対し、患者の退院につき、公開での審理、地域住民の代表も参加することから、これが可能となり望ましい。
第三に、アメリカのある地域で採用されているような条件付退院プログラムという段階的に社会復帰させる方法を、退院審判の決定の選択肢に加えることにより、より再犯防止、社会復帰に資することになる。医療施設は、患者が将来復帰するであろう現実の社会とは環境がかけはなれており、そのような医療施設での生活を基礎として、社会復帰が可能かどうかを判断するのは困難である。やはり、徐々に医療施設の外で、活動するようなプログラムを立て、現実の社会に適
触法患者の退院審判について
1、退院審判とは
「退院審判」とは、心神喪失や心神耗弱と診断され不起訴や無罪になった触法患者の精神病院への入院を裁判所が判断し、入院治療を受けた者が裁判所に退院の申請をし、その申請を受けて、退院が相当であるかどうかの審判を裁判所が行うものであり、アメリカの多くの地域で実際に運用されている。
この審判は、患者本人、主治医、精神科医、地域住民の代表である地方検事、保護監察機関、心理学者など、さまざまな立場の者が証言台に立ち、「病気は回復したのか」、「将来の再犯のおそれはないか」「退院は相当か」などについて、賛成派、反対派に分かれ、公開の場で激しい議論を展開し、これをもとに裁判所が、退院の可否について最終決定を下す仕組みになっている。
アメリカでは、この「退院審判」を導入してから、再犯率が21パーセント減った地域もあり、実効性のあるものとされている。
2、退院審判についての評価
このような「退院審判」導入については、「誤って再犯の恐れがあると判断され、長期入院となるケースが必ず出る」、「社会復帰のための医療を掲げる新制度が治安のための長期拘禁につながるのではな...