1.問題の所在
民法は、不動産の時効による取得として、他人の不動産を一定期間占有した者はその不動産の所有権を取得すると規定する(162条)。
時効による取得は原始取得とされる。しかし、建物の新築のような場合と違って、取得時効の場合には、権利を取得するBに対して、権利を失う真正所有者Aがいるし、またAが第三者Cに権利を譲渡することもあるので、B・A間の関係、B・C間の関係をどうとらえるか、そしてその場合に対抗要件を必要とするかという問題が生ずる。だが、他方において、民法は、物権の得喪変更は「登記」がなければ「第三者」に対抗できないとし(177条)、物権変動の原因に何ら制限を付していない。この規定からすると、不動産の時効による取得を第三者Cに対抗するためには、「登記」を要するものだとも解されよう。
このように、時効によってA所有の不動産を取得した者Bは、その後、元権利者Aから当該不動産を譲り受けた第三者Cとの関係では、「占有」の事実だけで所有権取得を主張できるのか、それとも「登記」が必要とされるかという問題が生じてくる。
2. 判例の立場
?当事者関係 先ず第一に、原所有者Aと時効取得者Bとの当事者関係においては、Bは登記なくして取得時効をAに対抗できる。判例は、両者は物権変動の当事者であることを理由としている。(大判大7.3.2民録24輯423頁)
?第三者が時効完成「前」に出現した場合 無権利者であるBがA所有の土地を自主占有して、取得時効が進行中に、その土地がAからCに譲渡されて、AからCに所有権移転登記がされても、Bの取得時効につき、Cの側から何ら時効中断の措置(民法第147条以下)が講じられておらず、Bの側に承認もしくは自主占有の喪失といった時効中断事由(民法164条)がなければ、取得時効はそのまま進行し、これが完成すれば、Bは所有権を取得する(最判昭35.7.27民集14巻10号1871頁)。
取得時効と登記
1.問題の所在
民法は、不動産の時効による取得として、他人の不動産を一定期間占有した者はその不動産の所有権を取得すると規定する(162条)。
時効による取得は原始取得とされる。しかし、建物の新築のような場合と違って、取得時効の場合には、権利を取得するBに対して、権利を失う真正所有者Aがいるし、またAが第三者Cに権利を譲渡することもあるので、B・A間の関係、B・C間の関係をどうとらえるか、そしてその場合に対抗要件を必要とするかという問題が生ずる。だが、他方において、民法は、物権の得喪変更は「登記」がなければ「第三者」に対抗できないとし(177条)、物権変動の原因に何ら制限を付していない。この規定からすると、不動産の時効による取得を第三者Cに対抗するためには、「登記」を要するものだとも解されよう。
このように、時効によってA所有の不動産を取得した者Bは、その後、元権利者Aから当該不動産を譲り受けた第三者Cとの関係では、「占有」の事実だけで所有権取得を主張できるのか、それとも「登記」が必要とされるかという問題が生じてくる。
2. 判例の立場
①当事者関係 先ず第一に、原...