相殺と差し押さえの優劣、差し押さえ時期と相殺適状の前後関係
この設問を考えるにあたり弁済期がいつなのかということが重要であるため、まず時系列に整理する。9月1日BはAに対する3000万円の代金債権を有し、弁済期は11月20日である。その後AはBに土地建物を売却し、AはBに3000万円の代金債務を有し、弁済期は10月20日である。Cは9月15日にAのBに対する弁済期10月20日の債権を差し押さえ、取立権を取得した。その後BはCに対して10月20日になっても支払わず、11月20日になって、BのAに対する代金債権の弁済期が来たため、Bは相殺の意思表示をしBはAに対する債権が消滅したとCに主張をする。
この場合CがAのBに対する債権を差止めた後に、BがAに対する債権を取得したとすると、民法511条により差止めを受けた債権による相殺をすることができないので、BがAに対する債権で相殺したという主張は認められないことになる。しかし、Cが差止めをする以前にBはAに対する代金債権を有していたことになるため、差止めの時期と弁済期との関係で問題になるのである。
明治31年2月8日の大審院判決では、相殺と差止めで相殺が優先するには、差止め前に相殺適状が生じているこ...