基本的人権としての「教育を受ける権利」の保障と「教育の機会均等」が現代の日本で実現されているかについて考えてみたい。
まず、戦前の日本で「教育を受ける権利」はどう位置づけられていたのだろうか。「大日本帝国憲法」では、学問の自由、教育を受ける権利を憲法で定めてはいない。ただ、昭和16年版の「国民学校令」では次のようになっている。第三章就学第八条で「保護者ハ児童ノ満六歳ニ達シタル日ノ翌日以降ニ於ケル最初ノ学年ノ始ヨリ満十四歳ニ達シタル日ノ属スル学年ノ終迄ヲ国民学校ニ就学セシムルノ義務ヲ負フ」とある。だが、次の第九条で「子どもに障害などがある場合は、その自治体の長の認可があれば義務はない。」している。戦前までは義務教育を受けずに働く子ども達も多かった。このように保護者の側に子どもに学校教育を受けさせるか否かの権利があった。また、戦前、とくに軍国主義が台頭してからは学校教育の目標は国家に忠誠を誓う臣民教育が主であった。「戦前の教育内容はすべて国家による統制の下におかれていた。」(『新・教育原理』西村誠58項)とある。このように子ども自身の「教育は子ども自身が有する無限の発達可能性を追求する基...