「乳幼児の心理について」
1.乳児期の心理について
赤ちゃんの生後1か月までを新生児期といい、それを含む約1か年を乳児期と呼ぶ。人類が原始時代から備えていた原始反射(モロー反射、歩行反射、把握反射、吸 反射、バビンスキー反射、緊張性頚反射)は、生後6か月ごろには、ほとんどなくなる。これは、自分の欲求や環境に応じて行うことのできる運動が現れる随意運動の出現により、原始反射が抑制されるためである。つまり、自発的行動への準備が整ってくるのである。
乳児期の子どもが認識できるのは、直接自分が見たり、触ったりしたものだけである。
J・ピアジェは、0歳から2歳までを感覚運動的段階と分類し、S・フロイトは0歳から1歳を口唇期、E・Hエリクソンは、口唇感覚期(信頼対不信)としている。このように人間の発達過程には特徴的な段階に分類することができる。さらにフロイトは、人間の子どもの行動発達を6段階に区分した。第1段階(出生時)は、運動の中で反射や本能が優勢な段階である。第2段階(1ヶ月)から第5段階(1歳)までが学習の段階である。そして、第6段階(1歳1ヶ月から6ヶ月)までを洞察(推論)と分類している。人間は生まれつき備わった行動から、学習・推論のような経験によって変化し発達していくと思われる。
他の霊長類との発達の比較し、違うことは言語を使うことである。言語は、はじめは「アーアー」などの喃語を反復しているが、やがて「ワンワン」、「ブーブー」という1語文から「ワンワンキタ」、「マンマチョウダイ」という2語文へと変化していく。
喃語は、発音を赤ちゃん自身がキャッチして楽しんでいるのだといわれているが、赤ちゃんの喃語に母親が同じような声で応えるため、コミュニケーションの手段ともなっている。最近では、以前より一般的に使われている、例えば「おいしい」というしぐさを頬を軽くたたくことから、母親とのベビーサインにもつながり、言葉を発する前の段階としてのコミュニケーション手段として、注目されている。ベビーサインによって、言葉を発しない乳児の欲求をよみとることができるのである。
乳幼児の情報処理能力としては、赤ちゃんのころは、食べ物の甘い辛いなどの近感覚が発達している。そして徐々に、見た物や音の区別をする遠感覚が発達し、いろいろな感覚を統合して物を区別できるようになる各種感覚機能がお互いに作用して認識されるのである。つまり、最初は、何がなんだか分からないものを、舐めてみたり、触ってみたり、放ってみたりして、そのものの特質を確認し、その後、感覚や運動を通して得られた情報から何であるかを認識するのである。このように、すでに乳幼児から物の認知は行われているのが分かる。しかし、これからの認知や言語を順調に発達させるためには、母親など保護者との愛着の形成が重要である。
子どもとお母さんは、たいていの場合特別に結びつきが強い。これは、父親は子どもが生まれた時点から父親であるのに対して、母親は子どもが胎内に宿ったときから母親であるということも考えられる。また、母子を結びつける要因は、生命維持のための依存であるという考え方があるが、R・スピッツは、母親の愛撫(マザーリング)ではないかという考え方を提示した。スピッツは、マザーリングの欠如が子どもの心身の発達にマイナスの影響を及ぼすことを明らかにした。ボウルビィは、単に身体接触が母子を結び付けているのではないとアタッチメント(愛着)に関する理論を構築した。
母と子の絆は子どもの一生の一番はじめに結ばれる信頼関係である。子どもが育つなかで、愛情をうけ
「乳幼児の心理について」
1.乳児期の心理について
赤ちゃんの生後1か月までを新生児期といい、それを含む約1か年を乳児期と呼ぶ。人類が原始時代から備えていた原始反射(モロー反射、歩行反射、把握反射、吸 反射、バビンスキー反射、緊張性頚反射)は、生後6か月ごろには、ほとんどなくなる。これは、自分の欲求や環境に応じて行うことのできる運動が現れる随意運動の出現により、原始反射が抑制されるためである。つまり、自発的行動への準備が整ってくるのである。
乳児期の子どもが認識できるのは、直接自分が見たり、触ったりしたものだけである。
J・ピアジェは、0歳から2歳までを感覚運動的段階と分類し、S・フロイトは0歳から1歳を口唇期、E・Hエリクソンは、口唇感覚期(信頼対不信)としている。このように人間の発達過程には特徴的な段階に分類することができる。さらにフロイトは、人間の子どもの行動発達を6段階に区分した。第1段階(出生時)は、運動の中で反射や本能が優勢な段階である。第2段階(1ヶ月)から第5段階(1歳)までが学習の段階である。そして、第6段階(1歳1ヶ月から6ヶ月)までを洞察(推論)と分類している。...