Cu(Ⅰ)触媒によるα,β‐不飽和エステルへの Grignard 試薬の共役付加
<1.緒言>
本実験の目的は、ブロモブタンとマグネシウムから Grignard 試薬を合成し、それを塩化
銅(Ⅰ)の存在下でα,β-不飽和エステルであるクロトン酸 sec-ブチルと反応させ、共役付加
した生成物 3-メチルヘプタン酸 sec-ブチルを得ることである。実験の最後には NMR と IR
を測定し、目的の生成物が得られたのかを確認する。また、3-メチルヘプタン酸 sec-ブチ
ルの収率を求め、不純物の存在などについても考察していく。
Br
Et
2O,rt MgBr
OBu
O
cat.CuCl
Et
2O,
OBu
O
Mg
0 rt
反応機構についてだが、まず始めに2分子の Grignard 試薬と塩化銅(Ⅰ)が反応して有機
銅(Ⅰ)酸イオン Bu2Cu
-が生じる。ひき続いて、その有機銅(Ⅰ)酸イオンがα,β-不飽和エス
テルであるクロトン酸 sec-ブチルに対して共役求核付加し、銅を含む中間体が生成する。そ
の中間体においてブチル基が転位し、中性の有機銅化合物、CuBu が脱離することにより、
最終生成物が生成する。
(反応機構)
MgBr Cu Cl MgBr Cu
MgBrCl
Cu Mg
+
Br
+
BuO
O
Cu Bu
2 BuO Cu
O
Bu
Bu
BuO
O
Bu
CuBu
H
3O
BuO
O
+
反応の過程で生成したこのような有機銅試薬は直接付加ではなく、共役付加をするとい
う点で有用であり、また高い収率で共役付加生成物を与えることができるという点で独特
である。
<2.実験操作と結果>
三口フラスコ(100 ml)、滴下漏斗、塩化カルシウム管をつないだ玉入り冷却管を用
いて、装置を組んだ。反応容器を乾燥させるためガスバーナーを用いてフレームドライを
行い、マグネシウム 4.9 g をフラスコに入れてから、N2フローを行った。
ジエチルエーテル(dry)5 ml とブロモブタン 0.5 ml を加えて反応が開始するのを待った。
5 分経過しても特に変化がなかったので、反応を促進させるためヨウ素を少量加え、さらに
フラスコを手で温めるなどしたが、やはり変化は見らなかった。最終的にドライヤーを使
って熱を与えたところ、液体は発熱し、ヨウ素の茶色が消えて白濁していき、反応が開始
したことを確認できた。
滴下漏斗にブロモブタン 1.9 ml とジエチルエーテル(dry)35 ml を入れて、1 滴ずつ約 30
分かけて滴下していった。滴下後、1 時間ほど室温で撹拌し続けたが、液体は少し白濁した
ままで、反応せずに残っているマグネシウムも確認できた。
塩化カルシウム管をはずして N2フローを行い、氷浴中にいれて 5 分間撹拌した。さらに
塩化銅(Ⅰ)を 0.02 g 加えて 5 分間撹拌したが特に変化は見られなかった。滴下漏斗にクロト
ン酸 sec-ブチル 2.1 ml とジエチルエーテル 10 ml を入れて、氷浴中で撹拌しながら、1 滴
ずつ 20 分かけて滴下していった。滴下していくにつれて、溶液が徐々に黒っぽく濁ってい
くのが確認された。さらに 10 分間撹拌した後、氷欲から取り出して室温で 20 分間撹拌し
た。
再び氷欲中に入れ、滴下漏斗から HCl (2 M)20 ml を 1 滴ずつ 10 分かけて滴下していっ
た。滴下していく途中で白い固体が生じているのが確認できた。すべての HCl を滴下し
Cu(Ⅰ)触媒によるα,β‐不飽和エステルへの Grignard 試薬の共役付加
<1.緒言>
本実験の目的は、ブロモブタンとマグネシウムから Grignard 試薬を合成し、それを塩化
銅(Ⅰ)の存在下でα,β-不飽和エステルであるクロトン酸 sec-ブチルと反応させ、共役付加
した生成物 3-メチルヘプタン酸 sec-ブチルを得ることである。実験の最後には NMR と IR
を測定し、目的の生成物が得られたのかを確認する。また、3-メチルヘプタン酸 sec-ブチ
ルの収率を求め、不純物の存在などについても考察していく。
Br
Et
2O,rt MgBr
OBu
O
cat.CuCl
Et
2O,
OBu
O
Mg
0 rt
反応機構についてだが、まず始めに2分子の Grignard 試薬と塩化銅(Ⅰ)が反応して有機
銅(Ⅰ)酸イオン Bu2Cu
-が生じる。ひき続いて、その有機銅(Ⅰ)酸イオンがα,β-不飽和エス
テルであるクロトン酸 sec-ブチルに対して共役求核付加し、銅を含む中間体が生成する。そ
の中間体においてブチル基が転位し、中性の有機銅化合物、CuBu が脱離す...