福祉住環境論

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    高齢者・障害者の住まいの環境改善について
    ~制度の現状と今後の課題の考察~
     現在、日本は高齢化社会から高齢社会へ突入し、じきに4人に1人が高齢者という超高齢化社会となる。そこで高齢者・障害者の住まいの環境改善に関する問題が重要視されてきている。 
    高齢者の住む多くの住宅は、木造家屋が老朽化していたり、段差が多くて狭く、冬には寒いという特徴の昔ながらの日本家屋であるため、高齢者にとって住みやすい住宅であるとは言えない。そのため近年では高齢者の家庭内事故死が急増している。
     このように、高齢者たちは輸送的、建築的、設備的、情報的、精神的、制度的、この6つの「バリア」に縛られて生活している。医療費の老人の個人負担が定額制から定率性へと変わったことや、介護保険法・措置制度が利用契約制度へ転換し、福祉が商品化されたことは高齢者の負担を増大させ、先ほど述べた住宅面と同じく、高齢者にはバリアとなっているのだ。そのため高齢者の中には社会保険、医療保険などの保険料や家賃、そして光熱費が払えないという人もいる。また高齢者をターゲットに悪質な商売が急増しているのも現状だ。
    これらの問題は超高齢化社会を迎えるにあたって大変な問題であり、早急に対応することが必要である。しかし高齢者の医療制度など政府の対応を見ると、政府が現在の高齢化社会にきちんと対応した政策を行っているとは決して言えない。では政府はどうすればよいのだろうか。福祉が大変充実している北欧と日本の違いについて住宅確保の面から述べ、そのことについて考えたいと思う。
    まず日本は、持ち家政策により住宅確保は基本的に個人責任であるといった考えがある。住環境整備に対しても私有財産への助成は部分支援であり、助成金の制限や所得制限、また助成の対象も持ち家のみとなっている。しかし、北欧では住宅確保は公的責任という考え方だ。助成金は全額支給で所得制限もなく、賃貸住宅の場合は不動産会社の了承が必要となるが助成の対象にも特に制限はない。
    このように両者は全く違った特徴を持っている。やはり高福祉高負担を掲げる福祉国家の多い北欧は、税金が高いなど国民の高負担によって福祉が充実していることが住宅確保の面からでもよくわかる。政府の政策が国民の福祉にしっかりと適応しているため、高齢者のバリアはほぼないであろう。一方日本は戦後に非福祉国家の道を歩んでしまった結果、他国に比べると対応が出遅れている。しかしこのままでは高齢化社会が進むと、今の生活では国民の生活が破綻してしまうので、いち早く制度を見直し、超高齢化社会を見越した福祉を充実させることが必要であると考える。
     次に住まいの改善に取り組む専門家の連携について述べる。住まいの改善を必要とする高齢者や障害者はなにかしら障害を持っており、住宅のちょっとしたバリアも生活を困難なものにするために家族への負担も増すといった悪循環が働く。そのため専門家たちは住まいを改善するのだが、ただ便利にすればよいというものではなく、精神面や家族の介護能力、費用に関してシビアに検討することが大切だ。したがって住まいの改善は本人および家族と多分野の専門家が連携して総合的に暮らしを支援する取り組みでなければならないと言える。
     福祉分野の専門家として自治体の各行政区の保健福祉局のケースワーカーやソーシャルワーカーホームヘルパーなどがある。彼らは日常的に本人および家族の生活支援や相談に関わっているのでその家族のことを詳しく知った上で改善に参加でき、また多くの制度運用に熟知している。このように彼らは住まいの改善においては重要

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    資料の原本内容

    高齢者・障害者の住まいの環境改善について
    ~制度の現状と今後の課題の考察~
     現在、日本は高齢化社会から高齢社会へ突入し、じきに4人に1人が高齢者という超高齢化社会となる。そこで高齢者・障害者の住まいの環境改善に関する問題が重要視されてきている。 
    高齢者の住む多くの住宅は、木造家屋が老朽化していたり、段差が多くて狭く、冬には寒いという特徴の昔ながらの日本家屋であるため、高齢者にとって住みやすい住宅であるとは言えない。そのため近年では高齢者の家庭内事故死が急増している。
     このように、高齢者たちは輸送的、建築的、設備的、情報的、精神的、制度的、この6つの「バリア」に縛られて生活している。医療費の老人の個人負担が定額制から定率性へと変わったことや、介護保険法・措置制度が利用契約制度へ転換し、福祉が商品化されたことは高齢者の負担を増大させ、先ほど述べた住宅面と同じく、高齢者にはバリアとなっているのだ。そのため高齢者の中には社会保険、医療保険などの保険料や家賃、そして光熱費が払えないという人もいる。また高齢者をターゲットに悪質な商売が急増しているのも現状だ。
    これらの問題は超高齢化社会を迎えるにあたって大変な問題であり、早急に対応することが必要である。しかし高齢者の医療制度など政府の対応を見ると、政府が現在の高齢化社会にきちんと対応した政策を行っているとは決して言えない。では政府はどうすればよいのだろうか。福祉が大変充実している北欧と日本の違いについて住宅確保の面から述べ、そのことについて考えたいと思う。
    まず日本は、持ち家政策により住宅確保は基本的に個人責任であるといった考えがある。住環境整備に対しても私有財産への助成は部分支援であり、助成金の制限や所得制限、また助成の対象も持ち家のみとなっている。しかし、北欧では住宅確保は公的責任という考え方だ。助成金は全額支給で所得制限もなく、賃貸住宅の場合は不動産会社の了承が必要となるが助成の対象にも特に制限はない。
    このように両者は全く違った特徴を持っている。やはり高福祉高負担を掲げる福祉国家の多い北欧は、税金が高いなど国民の高負担によって福祉が充実していることが住宅確保の面からでもよくわかる。政府の政策が国民の福祉にしっかりと適応しているため、高齢者のバリアはほぼないであろう。一方日本は戦後に非福祉国家の道を歩んでしまった結果、他国に比べると対応が出遅れている。しかしこのままでは高齢化社会が進むと、今の生活では国民の生活が破綻してしまうので、いち早く制度を見直し、超高齢化社会を見越した福祉を充実させることが必要であると考える。
     次に住まいの改善に取り組む専門家の連携について述べる。住まいの改善を必要とする高齢者や障害者はなにかしら障害を持っており、住宅のちょっとしたバリアも生活を困難なものにするために家族への負担も増すといった悪循環が働く。そのため専門家たちは住まいを改善するのだが、ただ便利にすればよいというものではなく、精神面や家族の介護能力、費用に関してシビアに検討することが大切だ。したがって住まいの改善は本人および家族と多分野の専門家が連携して総合的に暮らしを支援する取り組みでなければならないと言える。
     福祉分野の専門家として自治体の各行政区の保健福祉局のケースワーカーやソーシャルワーカーホームヘルパーなどがある。彼らは日常的に本人および家族の生活支援や相談に関わっているのでその家族のことを詳しく知った上で改善に参加でき、また多くの制度運用に熟知している。このように彼らは住まいの改善においては重要な役割を担っている。
     保健分野の専門家には保健士がある。こちらは福祉分野の専門家の特徴とほぼ同様であるため、福祉分野の専門家同様に重要な役割と言える。
     医療分野の専門家として理学療法士や作業療法士がある。彼らの役割は本人がどのように行動すればよいか、家族の介助、介護、予後の変化を予測し検討し、それを踏まえてアドバイスを行う。
     建築分野の専門家には建築士と施工技術者がおり、この2つはさらに設計分野と施工分野に分けられる。まず設計分野は住宅設計に従事しており、住み手の暮らし全般を把握し、住み手がよりよい暮らしをするために住まいを設計するのが専門である。もし住み手が障害を持っているならば福祉、医療の知識を持って住まいの改善をしなければならないため、福祉分野や医療分野の専門家との連携で改善案を作らなければいけない。特に他分野の専門家が判断できない建物の構造や設備、防災上について考慮したり、本人や家族の要望、意見を尊重した分野の専門家と検討した改善案をわかりやすく図面に表す役割もある。また、改善案がどのくらいの費用がかかるか査定することや、施工管理することも大事である。一方で施工分野は、検討された改善案が施工技術的に可能かまたはアドバイスをしたり、決定された改善案を施工することが大切な役割である。
     福祉用具分野は福祉用具や介護用品を販売する会社や、店舗を経営勤務する福祉用具選定員がいる。日常的に高齢者、障害者が在宅で自立した生活ができるための福祉用具、機器や、介護者が介護しやすい用品の相談、販売をし、特に、身体機能や生活習慣と機器との適合性について適切なアドバイスや、シミュレーションを行う役割を持っている。
     最後に、近年では福祉住環境コーディネーターや福祉用具プランナーが新しく注目されてきている。福祉住環境コーディネーターの役割は、高齢者が置かれている状況の中から具体的な住環境整備の方法を探って問題解決に導き、高齢者の生活と活動を改善して生活全体の質を高めていくことが挙げられる。さらに高齢者だけでなく、すべての人々の自立と尊厳ある生活を住宅という切り口を出発点にして、あらゆる側面から支援することも役割のひとつだ。また、福祉用具プランナーは住宅改修の知識を重視し、その上で福祉用具の適用の必要を位置づけているのが特徴である。
    今日、多くの自治体において高齢者・障害者の住まいの改善の経済的支援を目的とした助成制度を制度化している。しかし、身体の不自由な高齢者や障害者、介護している家族は助成制度や相談事業の情報に触れる機会が少なく、在宅ケアにかかわる福祉、保険、医療の従事者から知らされることが非常に多いのが現状である。現在日本社会は高齢化などの影響もあり、住まい改善のニーズが高まっている。よって相談システムがしっかりと確立され、自治体の公的支援システムとしての市民新聞等の情報の存在が市民の相談の件数や制度利用の件数の増加につながるだろう。一人でも多くの国民を助けるために、助成制度の制度化と相談システムの確立に取り組むことが急務であり、専門家たちの課題であると言える。
    余談であるが、「私の考える理想の住宅」について少し考えてみた。私は足の不自由な祖母と同居している。今の家は昔ながらの日本家屋であるために車椅子の祖母には暮らしにくいと思い、祖母と暮らすための住宅について考えた。まずガレージは車椅子が楽に移動できるほどのスペースを作り、段差などは一切ないようにする玄関の扉は大きく横にスライドさせるタイプにし、玄関は広く作り廊下との段差は1センチくらいにしたい。玄関から廊下には手すりをつけ祖母が歩けるようにすることで、祖母のリハビリにもなる。しかし一応廊下の幅は車椅子が楽に通れるものにする。リビングや寝室は基本的にはフローリングにするが、やはりいけばなや茶道の師範をしていた祖母のためにも和室も用意したい。テーブルなどは大きく6人程座れるもので、介護などしやすいようにもしたい。キッチンも車椅子の料理好きの祖母が調理しやすいようなるべく低めで、しかし低すぎない程度にしたい。食器棚は皿を縦に並べ、片手でも取れるようにする。トイレは4畳位の広い部屋で、扉はもちろんスライド式だ。また浴室には手すりをつけて浴槽は深すぎず広いもので、もしも中で人が倒れた場合にも備えたつくりにしたい。
     このようにさまざまな発想がでてくる。これを考えているとすべてに共通するのが「誰にでも使いやすい」ということだ。これは住まいの改善だけでなく、公園など公共の場の改善にも言える重要なキーワードだ。
    最後に、福祉の充実した北欧のように日本がなればいいのにとよく思うが、今の日本では完全に真似できないと考える。それは高福祉高負担の社会システムに合わないためだ。日本は福祉の問題だけでなく年金、少子化、ホームレス、色々な問題が相互関係にある。そのため日本を変えるには福祉環境だけでなく、すべての社会問題をいっせいに平行に持ち上げなくてはならない。そのことを上手にまとめ、スマートに改革を行う必要が政府にはあり、そのためも国民一人ひとりの福祉への自覚を高めることが必要だ。
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