国際連合論ホンモノ

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    国連の行う紛争と平和への取り組み
    東西対立、冷戦が終焉したことにより、それまで封じ込められていた対立が顕在化し、地域紛争や内戦が表面化、多発するようになった。紛争の多くは国家対国家の戦争ではなく、従来の軍事的枠組みや政治的枠組みによって処理することが難しい民族間の紛争や内戦であったため、国連PKOの数は激増した。従来平和の維持、安全保障は国連の仕事であり、国連の最大の目的は国連憲章第1条1項の「国際の平和と安全の維持」にある。国連の平和構築の従来のアプローチは調停などの政治的枠組み、国連軍・多国籍軍による軍事行動、PKOだ。PKOの具体的活動は停戦合意後の平和維持、平和維持軍、軍事監視団の派遣、治安維持などだ。PKOは両当事者の合意のもとで行われ、非強制的性格を持っているといえる。
    1992年、ガリ国連事務総長の「平和への課題」報告において、冷戦後の国連のあり方として従来の平和維持活動に加え、予防外交、平和創造、紛争後の平和構築を行うことやPKO 機能の拡大が提案された。これによりPKO の役割も平和に向け、紛争当事者の非武装化、難民の送還、選挙監視、人権擁護、政府機関や経済的社会的な復興活動などを含むようになり、飛躍的に増大した。しかし、ガリ構想を受けて拡大平和維持が最初に行われた「国連ソマリア活動」は停戦合意を受け、停戦監視と人道援助輸送の安全確保を任務として展開されたが、無政府状態に陥り、中立・非強制の原則で活動する限界が露呈された。また1992 年6月旧ユーゴスラビア共和国のボスニア情勢の悪化に伴いサラエボ周辺での人道支援物資の輸送支援と安全確保のために展開された「国連保護軍」においても中立・非強制の原則は限界を見せた。結局、紛争の激化に伴い、国連憲章第7 章による「自衛のための行動」として武力行使を含むあらゆる必要な措置をとる権限が与えられ、拡大平和維持へと性格を変えることになった。これらの失敗を経て、国連の活動が強制力を用いた措置から切り離されることとなる。これにより、国連の平和構築や安全保障のあり方が再検討されている。
    国連の中心課題とされるのが紛争の予防と解決である。紛争後の平和構築のための協力として、武装解除、動員解除、そしてさまざまな分野での社会復帰のためのガイドラインの設定や国軍や警察の建設、司法制度の整備などの安全保障・治安維持装置を創出すること、国内避難民・難民の帰還促進、行政基盤や財政基盤の整備などの内政復興、地雷・不発弾処理や開発基盤の整備などが行われる。国連は従来の政治的枠組みや軍事的枠組み、緊急援助に加え開発協力を有機的に取り込んで和平努力から無理なく平和構築を図っているといえるだろう。
    最近では「人間の安全保障」という考えの下で平和構築に取り組んでいることも多い。人間の安全保障とは、環境破壊、人権侵害、難民、貧困などの人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的にとらえ、これらに対する取り組みを強化しようとする政策概念である。人間の安全保障は未だ形成途上の概念であり、人道的危機に対して武力を投入する人道的介入が容認されるものか否かについてなどは現状では国際的合意は形成されていない。しかし、限定的な武力を効果的に投入して保護する責任を果たすことは国際社会の責任であるとする新たな概念が2005年、国連の成果文書により認められており、その具体化した構想として国連緊急平和サービス(UNEPS)という国連安全保障理事会直属の常設部隊の創設も現在検討されている。
    国連による人道的介入は、先に述べたソマリアにおける過剰な介入などさまざまな問題を抱えている。人道的介入の存在意義は生命を存続させることにあり、奪い取ることではないにもかかわらず、守られるべき人々の介入による被害が目立つ場合もあり、「平和的」「人道的」といった言葉の持つ危うさを私は感じる。介入の一番よい形は未然に人々を救済することにあり、予防の介入にあると考え、人道的介入がどのような状況、条件でどの程度行われるべきかの議論が国連でよりなされることを期待したい。
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