「日本的心情とキリスト教的信仰の交錯とその信仰基盤」
はじめに
千原英喜の合唱曲『マリア・オリエンタリス [東方のマリア] ~混声合唱のための5つの聖母賛歌』の中に「Ave Maria」という曲がある。この曲はいわゆる聖歌のうちのひとつ、Ave Mariaでありマリアを称える歌なのであるが、彼の作曲したこの「Ave Maria」は歌の元となる信仰基盤がキリスト教世界ではなく、日本のこころや原風景といったところに置かれている。
今回は講義で配布されたレジュメのいくつかも参考にしながら、歌の背景である信仰基盤をキリスト教的信仰ではなく、日本という世界に置くということの意味を明らかにし、日本的心情のキリスト教的信仰との出会い、交錯の可能性を考えていく。
1、「Ave Maria」とキリスト教的信仰
キリスト教は三位一体の神を信仰する宗教である。三位一体とは父なる神と子なる神、精霊はすべてひとつの神であるということである。この中で子なる神というのがキリスト教の救世主イエス・キリストであり、神が人間として受肉した姿であると考えられている。
そして、このイエス・キリストを産んだのが聖母マリアで...