ジョン・ロックにおける紳士教育を説明することにより、彼の習慣形成や賞罰法とはどのようなものかを調べる。
⇒ジョン・ロックは、若いころから医学に関心を持ち、その中で実証主義・経験主義の学問精神を学び取り、医師になる。一般に英国の経験論を代表する哲学者として、また、近代デモクラシーの理論を樹立した政治学者として親しまれているが、教育思想家としては専門家以外にはあまり知られていない。ロックの生涯は波乱に富んだ多彩なものであった。ペスタロッチーのように全生涯を打ち込む程華々しいものではなかったけれども、教育の問題は、常にロックの心に大きな座を占めていたのである。
①タブラ。ラサ(精神白紙説)
ジョン・ロックは、子どもは成長するにつれて様々な観念を獲得するようになると考えた。人の心の中には生まれながらに刻み付けられた観念や原理はなく私たちは「経験」から「観念」を獲得する、ということだ。これは、「精神は白紙のごときであり、この白紙は経験により色付けされる」と考えるタブラ・ラサ(精神白紙説)である。「人間は生まれた時、既に内的に発展する能力を有している。」とする教育学者ペスタロッチーの考えとは異なり、ロックの教育論はこの、タブラ・ラサ論に基づいて展開される。この人間の白紙の心に知識や観念が入る。それらを知覚するのが「感覚」である。感覚によって、一つ一つの対象について色や形、味、温度、匂い、その他様々なものが知覚され、それについての知識や観念が心の中に植えつけられ記憶される。ここでロックは子どもの教育はまず、感覚的訓練から始めるべきだと主張する。なぜなら、「観念は極めて安易に結びつく傾向を持っており、それが習慣化すると非常に強く思考を誤らせる結果となる。」からである。それゆえ正しい観念を持つように子どもを教育することが重要である。教育さえ確実ならばまだ白紙に近い子どもの心はどのような方向にでも決定されると考えた。ロックは、人間の生得的な性質を重視せず、教育さえすれば子どもを立派な人間にすることが出来るという楽観主義的教育観を持っていたといえる。
②紳士教育論(習慣形成)
ロックの教育論は一般に紳士教育論と言われ、健全な身体における健全な精神こそが人間の幸福を言い尽くしているとした。子どもの肉体を健康に保つためには、甘やかさずできるだけ自然のままの生活をするべきだと考えた。厚着やぴったりした服は避けるようにし、足は普段から冷たくし、運動・睡眠はたっぷり取ること、戸外の空気に親しむこと、薬はむやみに飲まないようにし、飲食は簡素に行う。ロックはこのような細かな規則の習慣化によって健康が獲得されると考えたのである。
ロックは親が幼児期の子どもを教育するに際して、子どもを可愛がるあまり子どもに必要な訓練を行っていないことを嘆いている。親が子どもの機嫌をとり、甘やかすことは、子どものうちにある生まれつきの性能を台無しにしているのだ。逆に理性的に適した事柄にしか同意しないように、欲望を我慢し理性に従えるように精神を正しくすることが教育において重要である。若い時に自己の意志を他人の理性に服従させることに慣れていない者は、自己の理性を活用すべき年齢になっても自分自身の理性に傾聴し従うようにはならないのである。それゆえにロックは子どもを厳しく教育するよう唱える。しかしそれは強制的であってはならず、単に威圧的に命令するのではなく「完全に出来るまで子どもたちに何回も繰り返しやらせる」ことであり、そうすることで子どもたちにとって習慣になり、自然なものになるのである。このように、子ども
ジョン・ロックにおける紳士教育を説明することにより、彼の習慣形成や賞罰法とはどのようなものかを調べる。
⇒ジョン・ロックは、若いころから医学に関心を持ち、その中で実証主義・経験主義の学問精神を学び取り、医師になる。一般に英国の経験論を代表する哲学者として、また、近代デモクラシーの理論を樹立した政治学者として親しまれているが、教育思想家としては専門家以外にはあまり知られていない。ロックの生涯は波乱に富んだ多彩なものであった。ペスタロッチーのように全生涯を打ち込む程華々しいものではなかったけれども、教育の問題は、常にロックの心に大きな座を占めていたのである。
①タブラ。ラサ(精神白紙説)
ジョン・ロックは、子どもは成長するにつれて様々な観念を獲得するようになると考えた。人の心の中には生まれながらに刻み付けられた観念や原理はなく私たちは「経験」から「観念」を獲得する、ということだ。これは、「精神は白紙のごときであり、この白紙は経験により色付けされる」と考えるタブラ・ラサ(精神白紙説)である。「人間は生まれた時、既に内的に発展する能力を有している。」とする教育学者ペスタロッチーの考えとは異な...