EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福に、どのような貢献を果たすと考えられるか
EUは、ECC(欧州経済共同体)、ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、EURATOM(欧州原子力共同体)を基礎として成立したECに加盟している12カ国による「マーストリヒト条約」の発効によって発足した。この統合の目的は、大きく3つである。第1の目的として、最も重要であると考えられている平和の実現が挙げられる。これは、シューマン宣言に基づいており、EU加盟諸国が戦争の火種となってきた石炭や鉄鋼を共同管理することでヨーロッパに平和の実現を狙ったものである。第2の目的は、政治統合や共通安全保障体制の確立によって、ヨーロッパ全体の国際的な発言力を強化することである。この発言力の強化によって、ソ連崩壊後唯一の超大国になったアメリカをけん制できる存在となり、国際的により高い地位を確立することが可能になる。そして第3の目的がシュペングラーの『西洋の没落』に象徴されるヨーロッパの相対的地盤沈下を食い止めることである。そのため、欧州単一議定書に規定された単一市場を導入することで、活力のあるヨーロッパを実現しよ...