1・はじめに
最初に中国における自殺から考えられることを自分なりに仮説を設けたい。
まず『中国では農村部での自殺が都市でのそれよりも多い』ということだが、これは農村部では自殺するほどの苦しい生活を余儀なくされているということが予想できる。
次に『女性の自殺』が多いということだが、これに関しては男性より女性が苦痛な状況におかれているということが想像できる。
現代の中国は『高い経済成長率を誇る』とされているが、これは北京や上海などの都市部に限られた話であり、地方まで及んでいないので、農村部は貧しいままでありということが推測できる。
以上より、今回のテーマである『中国で深刻となっている自殺問題』を、私は都市部と農村部の経済などの格差や、男女差別が関連していると考えており、この2つの側面を軸にしてこの問題について考察していきたい。
2・中国農村部の実態
中国農村部においては、出稼ぎ問題や都市部との収入格差など、自殺の原因となりうる様々な問題が存在する。
1930年の調査で、蘇州や江南地方では農村部の家計が赤字であるため、4.3%が出稼ぎをしたという結果が出ており、民工の出稼ぎ問題については、1930年の時点から存在しており、今日まで続いている。しかも、出稼ぎに行く人と雇用される人数がつり合わず、外国まで出稼ぎに行く人も出ているようだ。
現在の中国では自分の省を越えて出稼ぎする人は約4000万人であり、自分の省で出稼ぎする人を合わせると、約1億2000万人と、約3倍に増加する。この出稼ぎにより、妻や子供も都市に移るケースがあり、出稼ぎに行く都市が変わる度に一緒に移るので「流動児童」の問題もあるようだ。
さらに2003年には中国でSARSが発生し、都市部の経済活動が停滞したことや、都市で集団生活をする出稼ぎ労働者への感染などにより、地方からの出稼ぎ労働者が人員削減、即ちリストラの対象となり、彼らにとって大きな打撃となった。
冒頭で述べた通り、農村部では都市部との収入格差も問題となっている。中国の改革開放路線が1978年に始まってから約25年が経過したが、政府統計の指標によると、現在の平均年収は都市部の7703元に対して、農村部では2476元と約3倍も開きが出ている。伸び率についても同様に、都市部では14.3%であるのに対し、農村部では4.8%にとどまっている。しかし、これはあくまで政府統計に過ぎないので実際の開きは6倍くらいあるのではないかとも言われている。
また、湖北省監利県磐郷での農村調査では、①請負手がなく放棄された耕地が90.5%にも及び、他に調査した魚湖村では54.5%、候王村では31.9%、播河村では18.8%となっており、耕地放棄状況が悪化していると言うこと。②出稼ぎ人口は倍増しており、そのうち青壮年が27.5%を占めているため、農村では労働者・労働力が不足していると言うこと。③穀物価格は低下し続けているが、穀物栽培のコストは高いままであるので、耕作赤字に陥っているということ。④農民の負担金が重いということ。⑤農村の財政状況が赤字であり、さらに債務は深刻化しているということなどが分かった。
さらに、耕地面積は世界平均の半分にしか満たさず、農村の失業者は政府統計で約1億~1億5千万人と言われている。湖南省では農民がただでさえ重い負担を課せられているにも関わらず、村の共産党幹部に穀物を持ち去られてしまい、自殺した例もあるようだ。
このような状況に対して政府は、不明朗な分担金であり乱収費を切り捨てることで農民の負担を軽減すべ
1・はじめに
最初に中国における自殺から考えられることを自分なりに仮説を設けたい。
まず『中国では農村部での自殺が都市でのそれよりも多い』ということだが、これは農村部では自殺するほどの苦しい生活を余儀なくされているということが予想できる。
次に『女性の自殺』が多いということだが、これに関しては男性より女性が苦痛な状況におかれているということが想像できる。
現代の中国は『高い経済成長率を誇る』とされているが、これは北京や上海などの都市部に限られた話であり、地方まで及んでいないので、農村部は貧しいままでありということが推測できる。
以上より、今回のテーマである『中国で深刻となっている自殺問題』を、私は都市部と農村部の経済などの格差や、男女差別が関連していると考えており、この2つの側面を軸にしてこの問題について考察していきたい。
2・中国農村部の実態
中国農村部においては、出稼ぎ問題や都市部との収入格差など、自殺の原因となりうる様々な問題が存在する。
1930年の調査で、蘇州や江南地方では農村部の家計が赤字であるため、4.3%が出稼ぎをしたという結果が出ており、民工の出稼ぎ問題...