賃金の支払について簡潔に説明し、賃金の口座振込みおよび賃金の一部控除について論ぜよ。
労基法は、労働者の生活の糧である賃金が、全額確実に労働者の手に渡るようにするために賃金の支払いについて種々の原則を定めている(労基法24条)。これらの原則に違反した場合は罰則の適用がある(労基法120条)。
①通貨払いの原則
賃金は通貨で支払わなければならない(労基法24条1項)。これは、現物支給を禁止することが本旨であるため、ここでいう通貨とは、日本国の法貨であり、小切手などは入らない。
通貨払いの例外
法令や協約に定めがある場合(未だ法令には定めはない)は、通貨以外のもので支払うことも認められている(労基法24条1項但書)。通勤手当の現物支給がこれにあたる。
退職手当については、本人同意前提に自己宛小切手、支払保証付小切手、郵便為替による方法も認められている(労規則7条の2第2項)。しかし、賞与の自社株で支給することは許されないとする(ジャドー賞与請求事件・東京地判昭53.2.23)。
②全額払いの原則
賃金は直接労働者の支払われなければならない(労基法24条1項)。いわゆるピンハネや子...