「福祉国家の思想と原理について述べよ。」
1 イギリスの社会福祉の歴史がベヴァリッジ報告に至るまで
イギリスにおける福祉国家の歴史を考えるとき、1601年に集大成されたエリザベス救貧法が最初に取り上げられるだろう。この法律の目的は、労働能力のある貧民には強制的に労働させ、貧民たる児童は救貧院に収容して徒弟労働に服せしめ、ただ労働能力のない貧民には、救貧収容するということなどして社会不安を緩和するためにあった。救済の財源は救貧税、貧民のために慈善家が残した土地や金銭と法律違反者に対する科料であった。エリザベス救貧法は1834年の大改正に至るまで、イギリス救貧制度の基本法として存続した。そして、17世紀後半には、貧民を労働場で働かせることによって救貧費の削減、さらに国家の富を増大させようと「貧民の有利な雇用」計画が流行し、実験が繰り返された結果、1722年に「ワークハウステスト法」ができた。これは、労役場の強制労働と貧民行政の請負となっていた。その後、エリザベス救貧法では対応できないため、ギルバート法(1782年)やスピーナムランド制度(1795年)などが成立した。
やがて、18世紀から1...