日本語におけるアクセント合成 ~アクセント合成研究の必要性とは~
Ⅰ はじめに
私たちは普段、日本語を母国語として生活している。私は今まで、複合語における濁音化や、アクセント合成などにはほとんど注意を払うことなくどれも当たり前のこととして生活してきた。しかし、改めてそういった日本語の性質に着目することで、非常に興味深い法則があることを知った。一旦そのような法則に触れると、今まで気づかずに過ごしてきたこと自体を不思議に感じてしまう。 さて、しかし、このような日本語のアクセント合成などを今研究する必要性はあるのだろうか。それを疑問に思った私は、その研究目的を調べてみることにした。その結果は後述するとして、まずは、基本的な理解のために、日本語音韻的な性質と複合語におけるアクセント合成についてまとめてみたい。
Ⅱ 日本語の音韻構造的特徴
Ⅱ-1 モーラ
日本語は、音節よりも小さな単位であるモーラを基本単位とする言語であるとされる。日本語では基本的に、子音+母音の組み合わせを1モーラと数える。日本語におけるモーラは語の長さを数える単位なので、長音や撥音、促音などに代表される特殊モーラも語の長さという点では自立性を示すので、1モーラとみなされる。同様の理由で、子音+子音+母音(例:shu,gyo)であっても1モーラと数えることがあり、母音1文字(a,i,u,e,o)であっても1モーラと数える。
Ⅱ-2 日本語のアクセント
英語は、音の強弱をもとにして作られているストレスアクセント言語である。対して日本語はどうかというと、音の高低をもとにして作られているピッチアクセント言語と呼ばれている。日本語において、音の強弱というのはあくまで付随的な要素であり、長さや音色の違いはアクセントの構造とほとんど関係していない。さらに特徴的なのは、アクセント核を有する起伏のある語のほかにも、アクセント核を持たない平板式という語が存在することである。
また、日本語において語彙の持っているアクセント型は基本的に変化しない。例を挙げると、青(Ao)、赤(Aka)⇒青と赤(Ao to Aka) のように保持されるのである。(注:ここではアクセントがつくモーラを大文字で示した)これは日本語のアクセント型が文、または談話レベルの意味構造からは影響を受けにくいということを意味する。これは、日本語のアクセント型が高さによって決定される、つまり、ピッチの上昇や強さ、長さといった物理的特性が大きく関与しているのである。しかし、単語が連鎖して出現した際(例 複合語)に、アクセント型が変化する現象が頻繁に観測されるのである。
Ⅱ-3 複合語
「複合語」というものの定義は辞書をみても、多少解釈にずれがみられるので、今のところ統一された明確な定義というのはないようである。しかし、共通して言えることは、単独でも意味の通じる自立語が複数連鎖していて、ひとつの意味を表すということである。従って、接頭語、接辞語を含む合成語は複合語とは呼ばず、複合語分けて考えられるということである。
Ⅲ アクセント合成の考察
ここでは、複合語の中でも、三文字の名詞を組み合わせたものに限定して考えてみることにした。それを3連続連鎖名詞と呼ぶことにするが、この中には、アクセントが1つにまとまらずに分かれて複数のアクセント核を持つものがある。これを説明するには、複合名詞内において、意味の係り受けを考える。
三語からなる複合名詞の場合、大部分は次のように複合全体が単一のアクセント句になる。
例 全日本空輸⇒ZENNIH
日本語におけるアクセント合成 ~アクセント合成研究の必要性とは~
Ⅰ はじめに
私たちは普段、日本語を母国語として生活している。私は今まで、複合語における濁音化や、アクセント合成などにはほとんど注意を払うことなくどれも当たり前のこととして生活してきた。しかし、改めてそういった日本語の性質に着目することで、非常に興味深い法則があることを知った。一旦そのような法則に触れると、今まで気づかずに過ごしてきたこと自体を不思議に感じてしまう。 さて、しかし、このような日本語のアクセント合成などを今研究する必要性はあるのだろうか。それを疑問に思った私は、その研究目的を調べてみることにした。その結果は後述するとして、まずは、基本的な理解のために、日本語音韻的な性質と複合語におけるアクセント合成についてまとめてみたい。
Ⅱ 日本語の音韻構造的特徴
Ⅱ-1 モーラ
日本語は、音節よりも小さな単位であるモーラを基本単位とする言語であるとされる。日本語では基本的に、子音+母音の組み合わせを1モーラと数える。日本語におけるモーラは語の長さを数える単位なので、長音や撥音、促音などに代表される特殊モーラ...