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    資料紹介

    序論
    人は社会の中で生活する中で必ず、家族、学校、地域などの集団に属し、多くの人達と社会生活を営んでいる。
    多くの集団には、こうすべき、こうしてはならないといった集団の成員に対する標準や期待がそなわっており、集団に参加した個人はこれらに従うことが求められる。この、他者あるいは集団が提示する標準や期待を規範と呼ぶ。
    規範は明文化されている法律などの明白な規範もあれば、されていない暗黙の規範(慣例や習慣など)もあり、集団に属する時点でそれへ従うことを求められる場合もある。規範を守ることは規範逸脱者への制裁や排除・除名と対になっているのだから、当然ながらその集団へ属する動機付けが強い者ほどそれを守る傾向が強く、その逆もいえるだろう。集団の規範は集団を存続させ、人をまとめる力となるものである。これを集団規範と呼ぶ。
    では、その中で集団は、個人へ直接または間接的に自分の意識、考え、態度、行動などに非常に大きな影響を与えていると考えられないだろうか。
    一般的に、集団はその成員に対して同質性をもとめるような斉一化の力をおよぼしてくる。集団に同調するように圧力がかかることを斉一化の圧力というが、私たちの身近なものを例にとれば、良くも悪くも学校がその例だ。
    現在社会問題化している「いじめ」。クラスメートからの「しかと(無視)」がそれをされる生徒にとってじゅうぶん「いじめ」になることからも分かるように、ある集団に所属する個人にとって、ほかの集団成員のしめす態度や言動の影響はきわめて大きいといえる。先にも記述した通り集団規範からの逸脱が排除や仲間外れをまねくことは言わずともしれている。また、集団の中で目立ちすぎることも、ほかの成員からなんらかの制裁をまねきやすいのだ。見方をかえれば、これは個人の信念や態度や行動を集団の基準に合致させる方向に圧力がくわわっているということである。そのような圧力のもとで個人が信念や態度や行動を集団の基準の方向に変化させることを同調という。要するに、集団内では「右へならえ」の行動が起きやすいということである。
    この斉一化の力は規範的な力をおびている為、人にはそれがひとつの集団圧力として経験され、これは集団から個人へのいじめに見るように、それに対抗するのは難しい。とくに全体が斉一的な判断をしめす場合に、ひとりだけほかと異なる判断や意見をもったり行動したりすることは困難である。このことは、後にしめすアッシュの集団圧力に関する実験結果にみることができる。
    アッシュは集団圧力下における同調行動を、次のような実験をとおして明らかにした。彼は、線分の長さが同じか違うかの判断を求めるというふれこみで被験者を集め、標準刺激と同じ長さの線分と、それより長い、あるいは短い線分を次々に提示し、被験者に標準刺激と同じか、違うかを答えさせた。この時、被験者は8人いたが、そのうち7人はサクラで真の被験者は1人だけであった。サクラは実験者のだすサインにしたがって、全員そろって実際とはちがう長さの判断をくだすことを事前にきめてあった。
    このような状況下で次々に長さの判断をさせていくと、真の被験者はサクラの一致した判断(真実とはちがう判断)の圧力に屈してしまい、最終的には自分の判断をほかの被験者(実はサクラである)の答えに同調させてしまった。この簡単な実験は、集団圧力がいかに容易に個人の同調行動を促すかをしめしている。
    この同調にはいくつか種類があり、上の例のように、自分のくだす判断を「ただしい」とは思わないままに周囲に同調する場合を「追従」という。これは他から罰や制裁をう

    資料の原本内容

    序論
    人は社会の中で生活する中で必ず、家族、学校、地域などの集団に属し、多くの人達と社会生活を営んでいる。
    多くの集団には、こうすべき、こうしてはならないといった集団の成員に対する標準や期待がそなわっており、集団に参加した個人はこれらに従うことが求められる。この、他者あるいは集団が提示する標準や期待を規範と呼ぶ。
    規範は明文化されている法律などの明白な規範もあれば、されていない暗黙の規範(慣例や習慣など)もあり、集団に属する時点でそれへ従うことを求められる場合もある。規範を守ることは規範逸脱者への制裁や排除・除名と対になっているのだから、当然ながらその集団へ属する動機付けが強い者ほどそれを守る傾向が強く、その逆もいえるだろう。集団の規範は集団を存続させ、人をまとめる力となるものである。これを集団規範と呼ぶ。
    では、その中で集団は、個人へ直接または間接的に自分の意識、考え、態度、行動などに非常に大きな影響を与えていると考えられないだろうか。
    一般的に、集団はその成員に対して同質性をもとめるような斉一化の力をおよぼしてくる。集団に同調するように圧力がかかることを斉一化の圧力というが、私たちの身近なものを例にとれば、良くも悪くも学校がその例だ。
    現在社会問題化している「いじめ」。クラスメートからの「しかと(無視)」がそれをされる生徒にとってじゅうぶん「いじめ」になることからも分かるように、ある集団に所属する個人にとって、ほかの集団成員のしめす態度や言動の影響はきわめて大きいといえる。先にも記述した通り集団規範からの逸脱が排除や仲間外れをまねくことは言わずともしれている。また、集団の中で目立ちすぎることも、ほかの成員からなんらかの制裁をまねきやすいのだ。見方をかえれば、これは個人の信念や態度や行動を集団の基準に合致させる方向に圧力がくわわっているということである。そのような圧力のもとで個人が信念や態度や行動を集団の基準の方向に変化させることを同調という。要するに、集団内では「右へならえ」の行動が起きやすいということである。
    この斉一化の力は規範的な力をおびている為、人にはそれがひとつの集団圧力として経験され、これは集団から個人へのいじめに見るように、それに対抗するのは難しい。とくに全体が斉一的な判断をしめす場合に、ひとりだけほかと異なる判断や意見をもったり行動したりすることは困難である。このことは、後にしめすアッシュの集団圧力に関する実験結果にみることができる。
    アッシュは集団圧力下における同調行動を、次のような実験をとおして明らかにした。彼は、線分の長さが同じか違うかの判断を求めるというふれこみで被験者を集め、標準刺激と同じ長さの線分と、それより長い、あるいは短い線分を次々に提示し、被験者に標準刺激と同じか、違うかを答えさせた。この時、被験者は8人いたが、そのうち7人はサクラで真の被験者は1人だけであった。サクラは実験者のだすサインにしたがって、全員そろって実際とはちがう長さの判断をくだすことを事前にきめてあった。
    このような状況下で次々に長さの判断をさせていくと、真の被験者はサクラの一致した判断(真実とはちがう判断)の圧力に屈してしまい、最終的には自分の判断をほかの被験者(実はサクラである)の答えに同調させてしまった。この簡単な実験は、集団圧力がいかに容易に個人の同調行動を促すかをしめしている。
    この同調にはいくつか種類があり、上の例のように、自分のくだす判断を「ただしい」とは思わないままに周囲に同調する場合を「追従」という。これは他から罰や制裁をうけることを回避する目的で表面的に同調している場合であり、同調する個人の私的な信念や態度は変化しないことが多い。この場合の社会的影響は、個人に対して集団基準や集団規範に合致した行動をとるように働いているところから、規範的影響ともよばれる。
    次に、ある人を尊敬したり高く評価したりしているときに、その人のようでありたい、同じになりたいという他社への同一化から、自然に自分の信念、態度、行動が変化していく場合の同調がある。さらにいえば影響をあたえる人の主義・主張に心酔したり共鳴したりして、自分の信念、態度、行動をかえる場合の同調もある。これはオウム真理教を例に挙げればわかりやすいだろう。これら2つは他者の意見、主張、判断、行動を当てはめて、自らの信念を変化させ、自らがより適切な判断や行動をするように変化することである為、これらは情報的影響ともよばれる。
    この二つは、アッシュの実験を発展させたドイッチ(Deutsch,M)に発見された。ドイッチの実験では、回答をみなの前で行う条件と、他の人に見られないで回答を行う条件にわけたところ、他の人に回答を見られない条件では誤答率が下がることがわかった。さらに、あらかじめ自分の回答を手元に書いてから他の人の回答を聞き、自分の回答を表明する、などの条件もおかれた。
     これらの実験からドイッチは、同調には、なにが正しいのか判断する手がかりとして他者の判断や行動を参考にしている情報的影響と、他者からうける社会的な力である規範的影響の二つがあることを示した。
    その後のチャルディーニら((Cialdini,Kallgren,&Reno 1991年 )は、人が 規範 にそってある行動を行う際には、直接にそれを命じる『命令的 規範 』が 存在 するからだけではなく、まわりのたいていの人がしている、という 認知 から、『そうすべきだ』という『記述的 規範 』が発生する、という 理論 を導き出した。
    目的
    アッシュ (Asch,S 1951年 )は、 被験者 ひとりなら簡単に正解できる、「長さの同じものを判定する問題」において、 被験者 が回答を行う前に数人の サクラ が誤回答をすると、 被験者 の正答率が急激に下がることを証明した。今回はその実験の追試を行った。
    方法
    対象者 大学2年生28名 女性
    日時  平成19年5月30日 3時限
    場所  講義室
    材料  標準刺激と比較刺激が書かれた用紙10枚
    サクラが使う回答用紙と対象者が使う回答用紙の2種類
    実験者が使う教示1枚
    手続き
    1. 女子大生29名を5人1組のグループに分け、その中で実験者を一人決めた。
    各グループの実験者は担当の先生から実験の説明を受け、材料を受け取り、 各グループで、決められた実験場所に移動し実験を開始した。
    2.「これから実験をはじめます。今回の実験では、いくつかの問題を解いてもらいます。実験中は、他の人に話しかけたり、ほかの人の様子をうかがったりしないで下さい。」と教示を出し、被験者達を隣同士にならないように座らせた。
    3.「これから、一人に1枚ずつ用紙を配ります。用紙の中身はみないで、合図があるまでは、そのままでいて下さい。」と教示を出し、解答用紙を配った。
    今回は人数の都合上、誰が被験者かは知らせず、席順に一から三人目までがサクラで、四人目が被験者になるように解答用紙を配布した。
    4.解答用紙を配り終わったら、「それでは、自分の用紙を開いてみて下さい。他の人の用紙をのぞいたり、話したりしないようにして下さい。用紙には、自分の実験番号と、質問への回答方法や注意事項が書いてあります。用紙に書かれていることをよく読んで、理解しておいて下さい。」と教示した。
    被験者に配布した解答用紙とサクラに配布した解答用紙には違いがあるため、サクラに回答の仕方を理解してもらえるよう五分ほど時間をとった。
    5.「それでは、これからいくつかの問題を解いてもらいます。」と教示を出して質問①を提示し、四人全員に順番に見せていった。
    6.「この標準刺激と書いてある線の長さにもっとも近い長さの線を、1~3の中から一つ選んで下さい。答えが決まったら、さきほど配った用紙の「質問①」の回答記入欄というところに回答を記入して下さい。ほかの人の答えなどは、一切みないようにして下さい。」吐教示し、解答用紙の回答欄に答えを記入してもらった。
    みんなの様子を見て、回答が済んで入るようだったら、質問②へ進む。質問⑤までは、これを繰り返し行う。
    7.質問⑤まで終わったら、「次の質問⑥から⑩までは、答えを一人ずつ答えてもらいます。この標準刺激と書いてある線の長さにもっとも近い長さの線を、1~3の中から一つ選んで下さい。」と教示し、質問⑥を提示した。
    8.答えを選び終わったか確認し、「指名しますので解答用紙の答え方に従ってください」と教示して実験者が指名した方から、順番に答えてもらった。
    解答の指名はサクラを先に答えさせるため、実験番号1番の方から順番に指名した。
    サクラの回答用紙にはあらかじめ、質問⑥から⑩までは間違った答えの番号を答えるように指示されていた。
    9.実験番号4番の方まで終わると、質問⑦に移った。
    質問⑦から⑩は質問⑥と同じように繰り返し行う。質問⑩までが終了したら今回の実験はすべて終わりだった。
    結果
     Table1 質問①から⑤の回答(前半)
    No 質問① 質問② 質問③ 質問④ 質問⑤ 1班 2 3 1 2 2 2班 2 3 1 2 2 3班 2 3 1 2 2 5班 2 3 1 2 2 正当番号 2 3 1 2 2 正答者数 6 6 6 6 6 正答率 100% 100% 100% 100% 100% 質問①~⑤の平均正答率 100%
    Table2 質問⑥から⑩の回答(後半)
    No 質問⑥ 質問⑦ 質問⑧ 質問⑨ 質問⑩ 1班 2 3 2 2 2 2班 3 2 2 3 3 3班 3 2 2 3 3 4班 2 3 2 2 2 5班 2 3 1 2 ...

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