『主語を先行詞にした非限定の関係詞文句と分詞構文とを比較考察しなさい。』
まず、非限定関係詞文句から見ていくこととしよう。
「限定文句には様々な種類があるが、非限定文句は一様である」という誤った情報が、日本の英語教育の現場で、学生・生徒間にも教員の中にもあたかも真実であるかのようにまかり通っている現状がある。
しかしこれは誤りであり、非限定関係詞文句は少なくとも3種類に分けて考えられるべきものである。その3種類を、以下に記す。
(1)挿入句的非限定関係詞文句
先行詞の後に挿入され、その内容を描写する非限定関係詞文句。特に、文の主語を先行詞とした「挿入句的非限定関係詞文句」では、下に挙げた例のように「譲歩」や「理由」等の「含意(言外の意味)」が出て、意義上で副詞文句相当語句になることが多い。
ex)Less than an hour later one of the housemaids, who of course was quite aware that the Squire’s illness was serious, was surprised to hear a bold and decided step descending the stairs. (T. Hardy)
ここでのwho = because she…
(2)継続的非限定関係詞文句
非限定の関係詞文句の中には、先行詞をうけてさらに話を進めていく文句もある。このようなタイプの関係詞文句は、例のようにそれぞれに独立した単一の文句、または「等位文句」に相当する。
ex)He was Richard Phillotson, who had recently removed from the mixed village school to undertake a large boy’s school in is native town of Shaston, which stood on a hill sixty miles to the south-west as the crow flies. (T. Hardy)
(3)分離関係詞文句
等位接続詞がその前の要素から分離されて次の文の先頭に立つ「分離接続詞」になることがあるように、非限定の関係詞文句も、先行詞を含む前の文から分離されて、関係詞が次の文の文頭に立つ「分離関係詞文句」になることがある。
ex)He was, in some paralyzing way, conscious of his own defencelessness, though he had all the defence of privilege. Which is curious, but a phenomenon of our day. (D. H. Lawrence)
以上の3種類の例から、非限定関係詞文句とて一様ではないことがわかった。
では次に分詞構文について、詳しく述べることとする。
分詞構文が「構文」として捉えられ、その用法が重視されてきたことは、英語教育上非常に有益である反面、英語の真の理解の妨げとなっている面もある。この誤解を生んだ原因は、分詞構文の特殊性に気をとられすぎて、分詞構文が「分詞句」であることを忘れてしまうことに端を発しているようである。分詞(participle)はその語義通り、「動詞の性質と形容詞の性質をparticipate(=take part)する(一部分ずつ持つ)ことば」である。
「主語を先行詞にした非限定の関係詞文句と分詞構文とを比較考察しなさい。」
本稿では、主語を先行詞にした非限定関係詞文句と分詞構文の二者の本質をそれぞれに詳らかにしたのち、両者を比較しながら共通性と相違点について探ってみたい。
まず主語を先行詞にした非限定関係詞文句の特質について述べる前に、非限定関係詞文句一般について概説しておきたい。本稿で扱う「“主語を先行詞にした”非限定関係詞文句」を理解するには、非限定関係詞文句全般および各用法の特徴を識り、「“主語を先行詞にした”非限定関係詞文句」の位置付けを正しく弁えて置くことが欠かせないと思われるからである。
さて関係詞について、高校レベルでの旧来の学習参考書には以下のように解説されるのが一般的である。それは「関係詞の前にコンマ(,)を置かない用法を限定用法と呼ぶ。これに対して、関係詞の前にコンマを置く用法を継続用法と呼ぶ。」というものである。その主旨が安易に敷衍されていき、「限定文句にはさまざまな種類があるが、非限定文句は一様である」という誤信を生じさせることが起こり得る。しかし実際は、非限定関係詞文句は最低でも3種類に分けて考えるべきであり、また必ずしも「関係詞の前にはコンマがくる」とは限らないのである。 以下、主な非限定関係詞文句の3用法を概説する。
挿入句的非限定関係詞文句:先行詞の後に挿入され、その内容を詳しく描写する文句。
継続的非限定関係詞文句:先行詞を受けてさらに話を進めていく文句。これらはそれぞれに独立した単一の文句、または等位文句に相当する。
分離的関係詞文句:先行詞を含む前の文から分離され、関係詞が後続する文の文頭に立つ。
さてこれら3用法の特質のなかで、特に分詞構文との比較において重要と思われる要素がある。それが、①の用法「挿入句的非限定関係詞文句」である。その中でも特に主語を先行詞とした非限定関係文句」については、「譲歩」や「理由」、「時」などの含意が生じ、意味上では文句全体が副詞文句相当語句になることが多いのである。これは後に詳述するが、文の主語を連体的に非制限的に修飾するという「分詞構文」との比較の上で鍵となる要素である。 連体的修飾語が非制限的に使われると、それが一種の挿入句となり、副詞的な意味を言外に含むようになるのであり、それが主語を修飾する際は、主語と述語との関係を通じて文全体にかかってくる。 非制限的連体修飾語が副詞相当の意味を含むという事は、主語を先行詞とする非限定関係詞文句の場合はそれが顕著にあらわれ、この現象は分詞構文にも同じことがいえるのである。 さて次段落より、これまで焦点を当ててきた「主語を先行詞とする非限定関係詞文句」と「分詞構文」との比較を、幾つかの観点から詳しく、例文を挙げながら述べていきたい。
【含み(共通点)】
・非制限的に文の主語を修飾するがゆえに「理由」や「譲歩」といった含みが出る。
The defendants, who continue to assert their innocence, are expected to appeal. (COB)
The defendants, continuing to assert their innocence, are expected to appeal.
この上の2文のコンマ間は双方とも”as they continue to assert their innocence”と置き換えられる。つまりThe defendantsについて、be expected to appeal(上訴