「日本の景気回復に規制緩和は不可欠」と欧州委員会
欧州委員会は11月4日、日本政府と規制緩和に関する高級事務レベル会合を開いた。欧州委員会対外総局(第1総局)のジェラール・ドゥペール副総局長と外務省経済局の大島正太郎局長が共同議長を務めた会合で、欧州委員会は日本に対し規制緩和をいっそう推進するよう要請した。
ドゥペール副総局長は会合終了後に次のような談話を発表した。
「日本の景気が回復し、内需主導の持続可能な成長に必要な条件が整うことは全世界のためになる。それを実現するための政策手段として、構造改革、なかでも規制緩和は不可欠の要素だ。包括的で信頼に足る規制緩和推進計画は競争を促し、ひいてはビジネスチャンスを拡大し、生活水準を向上させることになる」
「日本やEUのような成熟した経済は、今日のグローバル化した世界経済から孤立するような形で規制されていることはもはや許されない。規制緩和がうまくいくことは、欧州の経験から明らかである。単一市場の創設は、本質的には規制改革を前提とするプロセスだったのであり、その本質は今も変わっていない。単一市場計画は、当初の何年かだけで、600億800億ECU(約9兆5000億12兆6000億円)の所得を増加させ、60万前後の新規雇用を創出したと推定されている。規制緩和措置は長期的にしか利益をもたらすことはないと、ときとして表明される危惧とは裏腹に、これらの効果がきわめて速やかにあらわれたことを、私は強調しておきたい」
「我々は日本における今日までの進展を認識している。しかしながら、行き過ぎた規制が依然として競争を妨げ、健全な構造改革にブレーキをかけているのも事実だ。日本経済を回復軌道に戻すために、日本がまず、規制緩和のもたらす長期的利益ではなく、主として金融部門の改革と財政出動による景気刺激策に頼るべきかどうかが、これまでは問われてきた。私は、規制緩和という裏付けなくして金融部門の改革と財政措置による景気刺激策は何らの成果もあげないことを強調したい。構造改革は先延ばしにできる「任意の追加措置」ではない。景気回復にとって不可欠の条件であり、長期的な経済と金融の安定を確保するための前提条件である」
「規制改革は、日本にとって長期的な景気回復の柱である一方で、EUにとっても重大な意味を持っている。欧州企業が直面している数多くの貿易障壁の撤廃につながる可能性があるからだ。したがって、1999年3月に発表される新しい規制緩和推進計画に10月に日本政府に提出したEU提案が盛り込まれることに重大な関心を持っている」
背景
規制緩和に関する日・EU間の専門家レベルの対話は1994年に合意された。この対話は、少なくとも年1回は規制緩和に関する高級事務レベル会合を開くという、1997年の決定により強化された。今年1月12日の日・EU首脳協議において、当時の橋本龍太郎首相、トニー・ブレア欧州理事会議長とジャック・サンテール欧州委員会委員長は対話を深化させることの重要性について意見の一致を見た。
今年3月にはジェラール・ドゥペール副総局長が日本政府との間で規制緩和に関する高級事務レベル会合を開いている。10月12日の日・EU閣僚会合では、欧州委員会のブリタン副委員長がEUの200項目の規制緩和提案リストを日本側に提出した。ブリタン副委員長は規制緩和に関する対話の双方向性と質の高さに満足の意を表明し、日本が規制緩和への取り組みに拍車をかけることの重要性を強調した。
本日の会合は、200項目を上回るEUから日本政府への規制緩和提案のうち、とくに46項目をハイライトとして取り上げた文書をもとに進められた。ハイライトは4つの横断的分野(行政手続き、投資、流通、競争政策)と9部門(建設、農業および食品、運輸サービス、金融サービス、専門サービス、自動車部門、電気通信、医薬品および化粧品、皮革および革靴)をカバーしている。
規制緩和提案リストのハイライトは以下を含め、いくつかの基準に沿って作成された。
・想定される経済効果と構造改革の結果
・日本側が表明している必要最小限の規制という目的を補完するもの
・政策実施の早さおよび実現可能性
電気通信、金融サービス、自動車、建設など、一部の分野での進展は見られるものの、EUの提案リストはまだ引き続き多くのことに取り組まなければならないことを物語っている。
ドゥペール副総局長は日本滞在中に、外務省、通産省、農林水産省、大蔵省の高官、さらには政界、規制緩和委員会の代表、日欧経済界の代表との個別の会合も予定している。こうした会合では、日本経済の現状と規制緩和をはじめとする構造改革の進捗状況を中心に話し合いが進められる。
情報提供先 -> http://jpn.cec.eu.int/home/news_jp_newsobj339.php