ベンチマーキング
提供機関 : Wisdom
提供機関 URL : http://www.blwisdom.com/bizword/ben/
米国ゼロックス社の成功で広まった経営改善手法
一般的には、あまり耳慣れない言葉ですが、ベンチマーキングは、経営改善の手法として知られています。また建設業界では、土地測量の基準点を表し、コンピュータの世界では、異なるハードウェアやソフトウェアを使って同じプログラムを実行し、性能比較を行うテストの意味で使われています。
ここでは、経営改善の手法としてのベンチマーキングについて説明します。ベンチマーキングの定義は、いろいろあるようですが、「日本経営品質賞アセスメント基準書」(日本経営品質賞委員会)によると、
『組織が改善活動を行うときに、業界を超えて世界で最も優れた方法あるいはプロセスを実行している組織から、その実践方法を学び、自社に適した形で導入して大きな改善に結びつけるための一連の活動』
と、定義されています。
ベンチマーキングの手法が広く知られるようになったのは、1989年、米国ゼロックス社がマルコム・ボルドリッジ全米品質賞を受賞したことに始まります。
米国ゼロックス社は、1970年代に日本企業の普及型コピー機に市場を席巻され、1970年代半ばに80%もあったシェアが、1980年代になると10%台へと激減しました。大いなる危機感を抱いた米国ゼロックス社は、ライバルの日本企業を分析し、自社の在庫量が多いことや、生産性が低いことに気づきました。
この在庫量を減らすため、物流業務に関して、全く異なる業種のL.L.ビーン社の倉庫内業務のベンチマーキングを実施し、その手法を学ぶことによって、大幅なコストダウンに成功しました。 その結果、競争力を回復し、1989年には、シェアを50%弱にまで戻すことができました。
その点が評価され、受賞に結びついたのですが、その際、ベンチマーキングの手法を取り入れたことを発表し、それを契機に全米にベンチマーキングが急速に広まることになりました。
バブル経済崩壊後の日本企業の不振に対し、1990年代に米国企業が急速に業績を回復させた背景には、日本企業の業務プロセスをベンチマーキングによって学び、経営改革を進めてきたという事実があります。
ベストプラクティスに学び、ギャップを埋める
米国ゼロックス社の例でおわかりのように、ベンチマーキングは、対象とする業務のベストプラクティス(最も優れた実践方法)を探し出し、自社と比較して差異をはっきりさせ、そのギャップを埋めるように、自社の業務プロセスを改善していく手法です。
ベンチマーキングを進めるにあたって、対象とする業務プロセスを選定しますが、その前に自社の現状を正確に把握しておかなければなりません。自社の強みと弱みを分析し、現状の競争力を正確に評価します。そして、弱みを改善するのか、強みをより強くするのかの方針をはっきりさせ、競争力を向上させるために最も効果的な業務プロセスを対象として選定します。
次に、対象とする業務プロセスに関して、ベストプラクティスをもつ企業について調査し、対象とする企業を決定します。ここでは、競合する同業他社を選ぶことも考えられますが、対象企業から、直接情報を入手する難しさがあります。また国内に限らず、ワールドワイドな視野で外国の企業を含めて候補とし、大きな効果をねらう方法も考えられますが、この場合は、コストもかさむことを考慮しなければなりません。
一般的に、あくまでも業務プロセスという視点
ベンチマーキング
提供機関 : Wisdom
提供機関 URL : http://www.blwisdom.com/bizword/ben/
米国ゼロックス社の成功で広まった経営改善手法
一般的には、あまり耳慣れない言葉ですが、ベンチマーキングは、経営改善の手法として知られています。また建設業界では、土地測量の基準点を表し、コンピュータの世界では、異なるハードウェアやソフトウェアを使って同じプログラムを実行し、性能比較を行うテストの意味で使われています。
ここでは、経営改善の手法としてのベンチマーキングについて説明します。ベンチマーキングの定義は、いろいろあるようですが、「日本経営品質賞アセスメント基準書」(日本経営品質賞委員会)によると、
『組織が改善活動を行うときに、業界を超えて世界で最も優れた方法あるいはプロセスを実行している組織から、その実践方法を学び、自社に適した形で導入して大きな改善に結びつけるための一連の活動』
と、定義されています。
ベンチマーキングの手法が広く知られるようになったのは、1989年、米国ゼロックス社がマルコム・ボルドリッジ全米品質賞を受賞したことに始まります。
米国ゼロックス社は、1970年代に日本企業の普及型コピー機に市場を席巻され、1970年代半ばに80%もあったシェアが、1980年代になると10%台へと激減しました。大いなる危機感を抱いた米国ゼロックス社は、ライバルの日本企業を分析し、自社の在庫量が多いことや、生産性が低いことに気づきました。
この在庫量を減らすため、物流業務に関して、全く異なる業種のL.L.ビーン社の倉庫内業務のベンチマーキングを実施し、その手法を学ぶことによって、大幅なコストダウンに成功しました。 その結果、競争力を回復し、1989年には、シェアを50%弱にまで戻すことができました。
その点が評価され、受賞に結びついたのですが、その際、ベンチマーキングの手法を取り入れたことを発表し、それを契機に全米にベンチマーキングが急速に広まることになりました。
バブル経済崩壊後の日本企業の不振に対し、1990年代に米国企業が急速に業績を回復させた背景には、日本企業の業務プロセスをベンチマーキングによって学び、経営改革を進めてきたという事実があります。
ベストプラクティスに学び、ギャップを埋める
米国ゼロックス社の例でおわかりのように、ベンチマーキングは、対象とする業務のベストプラクティス(最も優れた実践方法)を探し出し、自社と比較して差異をはっきりさせ、そのギャップを埋めるように、自社の業務プロセスを改善していく手法です。
ベンチマーキングを進めるにあたって、対象とする業務プロセスを選定しますが、その前に自社の現状を正確に把握しておかなければなりません。自社の強みと弱みを分析し、現状の競争力を正確に評価します。そして、弱みを改善するのか、強みをより強くするのかの方針をはっきりさせ、競争力を向上させるために最も効果的な業務プロセスを対象として選定します。
次に、対象とする業務プロセスに関して、ベストプラクティスをもつ企業について調査し、対象とする企業を決定します。ここでは、競合する同業他社を選ぶことも考えられますが、対象企業から、直接情報を入手する難しさがあります。また国内に限らず、ワールドワイドな視野で外国の企業を含めて候補とし、大きな効果をねらう方法も考えられますが、この場合は、コストもかさむことを考慮しなければなりません。
一般的に、あくまでも業務プロセスという視点で対象企業を探せば、業種や業界にこだわることなく、ベストプラクティスをもつ企業は発見できるはずです。
こうして対象企業が決まれば、その企業の業務プロセスの詳細な情報を収集する段階へと進みます。情報収集の方法は、業界紙や業界セミナー、業界の交流会、異業種交流会、対象企業のパブリシティ情報など、いろいろな方法で入手しますが、最も効果的、効率的な方法は、直接、企業を訪問して行うインタビュー調査です。実際に行うとなると、対象企業のもつ強みを公開してもらうことになりますから、なかなか簡単に承諾を得られないことも事実です。
このとき、忘れてならないのは、情報を収集する側のメリットだけを考えるのではなく、相手企業が要求すれば、自社のもつ強みであるスキルやノウハウを提供する覚悟も必要です。いずれにせよ、直接企業とコンタクトする場合は、節度ある行動規範に則って行動しなければなりません。
次の段階では、収集した情報を分析し、指標としたベストプラクティスと自社との差異を明らかにします。そして、自社で改善を進めるための目標を掲げ、計画書を作成します。ここでは、漠然とした目標では、改善を行う社員のモチベーションがあがりませんから、当然、目標や計画書は、数値を入れたもので設定します。
そして、計画書にもとづき、業務プロセスの改善を進めていきます。また改善を実行している過程では、継続的にチェックを行い、進捗状況や改善効果を測定します。
多くの効果が期待できるベンチマーキング
ベンチマーキングの導入によって得られる効果は、どの業務プロセスを選び、どれだけの目標を掲げたかによっても異なりますが、一般的に次のような導入効果が期待されています。
・ 業務プロセス改善による収益性の向上
・ 業務プロセス改善による経営品質の向上
・ ベストプラクティスを知ることにより、変革のスピードがアップする
・ ベストプラクティスに学ぶため、より高い目標を設定できる
・ 自己評価を行うので、国内外の他社と比較することで、自社の置かれた位置がわかる
・ベストプラクティスということで、変革に取り組む際、関連部門の合意を得やすい
・ 他社に学ぶことにより、自社内の意識改革につながる
こうした効果の期待できるベンチマーキングですが、注意しなければならない点もあります。
ベンチマーキングは、対象となる業務を選びますが、これは、その該当部門だけの改善を目指しているのではなく、あくまでも全社最適を実現するための改善であることです。そのためには、業務プロセスを部門横断的に考える必要があります。
また、ベストプラクティスに学んで、当初の目標とする改善をしたからといって、それで終わりではなく、常に謙虚な姿勢で、継続的に学ぶことを忘れてはなりません。経営環境は、非常に速いテンポで変わり、現時点のベストプラクティスも、長期にわたってベストプラクティスである保証は、どこにもないからです。それどころか、新たなイノベーターが出現し、ベストプラクティスをもつ企業が短期間に交代していると考えるほうが、自然な時代になっています。
一方、中堅・中小企業などの場合は、最初からグローバルのなかでのベストプラクティスを目標にするのではなく、段階的にベンチマーキングを導入する方法も考えられます。いわば、身近なベルトを目標とし、少しずつレベルを上げていく方法です。この場合、最初からベストプラクティスに学んでいるわけではなく、ベンチマーキングの定義からは外れますが、現実的な方法としてお勧めできます。
たとえば、自社の他部門から始め、同業他社、異業種他社、グローバルレベルへといった対象の設定方法をとり、各段階でのベストプラクティスを学び、レベルアップを図っていきます。
ベンチマーキングは、「ベストに学ぶ」方法ですが、この言葉で表現しなくても、すでに何らかの形で、こうした方法を実践している企業も多いはずです。
ここでは触れませんでしたが、ベンチマーキングを成功させるには、経営トップや部門管理者の理解と、強いリーダーシップが必要であることは、言うまでもありません。 (2003年10月 29日掲載)
情報提供先 -> http://www.blwisdom.com/bizword/ben/