減損処理後の会計処理
固定資産の減損に係る会計基準は、事業用資産の収益性の低下により投資額の回収を見込めなくなった場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額することを求めている。
減損会計基準によれば、減損の兆候がある資産又は資産グループについて、減損の存在が相当程度確実な場合に減損損失を認識するという蓋然性規準により減損の認識の判定をし、帳簿価額と回収可能価額の差額を減損損失として測定することで、減損処理が行われる。
減損会計では、この減損の認識と測定が論点の中心であるが、この減損処理を実行した後の会計処理にもいくつか論点がある。以下その論点をみていく。
1.減価償却の取り扱い
減損会計基準では、「減損処理を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行う」(基準三1)と規定されている。「減損処理を行った資産についても、減損処理後の帳簿価額をその後の事業年度にわたって適正に原価配分するため、毎期計画的、規則的に減価償却を実施すること』(前文四3(1))が、必要であるからと規定されている。
ここで、「そもそも正規の減価償却を実施しているのに、なぜ減損会計を適用しなければならないのか、そして減損処理後はいったん減損処理を実施したのだから、そのまま減損処理をし続けるべきで、再度正規の減価償却を実施すべきでない」という批判がある。つまり、原価配分目的の減価償却と回収可能価額を基礎とする減損処理は、異なる論理の下で実施される別個の会計処理であり、いったん減価償却から離れ、異なる論理に基づく減損処理を実施したならば、その後は回収可能価額を基礎とした論理の下で減損処理のみを実施すればよいのであって、その後再度、原価配分目的の減価償却を継続することは、論理矛盾であるという批判がなされる。
非償却性資産(例えば土地)において、減価償却は行われず、価値の低下を会計上反映させる手段は、減損処理しかない。そのため、上記のような論理矛盾は起こりえない以上問題とはなっていない。
しかし、償却性資産において、減価償却は費用というフローを決定するための手続とみて、減損損失を資産または資産グループの期末時点におけるストックとしての価値決定の手続とみた場合、両者の会計処理は、費用化重視(P/L費用価額)の観点からくるものと、ストック価値反映重視(B/S価額)の観点からくるものであり、両者は異なる論理の下で実施される会計処理である。そのため、いったん論理の異なる会計処理を実施した後に、また論理の異なる会計処理を実施することは、会計方針のみだりに変更することになることと等しく、継続性の原則に反するという批判がなされ、たしかにこの批判には説得力がある。
それに対して、減価償却が原価配分手続であるように、減損処理も原価配分手続であると捉えるならば、両者は同じ論理の下で実施される会計処理であるといえる。両者は同じ論理に基礎を置いている以上、正規の減価償却にかえて減損処理を実施することも、減損処理を実施した後も正規の減価償却を実施することも何ら問題はなく、論理矛盾もないこととなる。つまり、減損処理後の帳簿価額は、回収可能価額を表しているが、それは当該資産または資産グループが回収過程(売却再投資)に入ったことを意味するわけではなく、減損処理後の帳簿価額は依然として当該資産または資産グループへの投資額のうちの未償却残高であると捉え、当該資産または資産グループへの投資は継続していると捉えるのである。とするならば、正規の減価償却も減損処理も
減損処理後の会計処理
固定資産の減損に係る会計基準は、事業用資産の収益性の低下により投資額の回収を見込めなくなった場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額することを求めている。
減損会計基準によれば、減損の兆候がある資産又は資産グループについて、減損の存在が相当程度確実な場合に減損損失を認識するという蓋然性規準により減損の認識の判定をし、帳簿価額と回収可能価額の差額を減損損失として測定することで、減損処理が行われる。
減損会計では、この減損の認識と測定が論点の中心であるが、この減損処理を実行した後の会計処理にもいくつか論点がある。以下その論点をみていく。
1.減価償却の取り扱い
減損会計基準では、「減損処理を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行う」(基準三1)と規定されている。「減損処理を行った資産についても、減損処理後の帳簿価額をその後の事業年度にわたって適正に原価配分するため、毎期計画的、規則的に減価償却を実施すること』(前文四3(1))が、必要であるからと規定されている。
ここで、「そもそも正規の減価償却を実施し...