重要性の原則
重要性の原則は、「企業会計原則」において、一般原則中の正規の簿記の原則、明瞭性の原則および貸借対照表完全性の原則の注解として位置し、形式上は一般原則に含まれてはいないが、実務上は頻繁に援用される原則である。
1.重要性の原則の意義
重要性の原則は、「企業会計原則注解」・注1にあるように、重要性の乏しいものについては簡便な処理表示を容認するという原則である(消極的側面)。つまり厳密な会計処理や表示を行うために必要なコストと、その結果得られるベネフィットとを比較し、ベネフィットよりもコストが過大な場合は、簡便な処理表示を認めるということである。また重要性の乏しいものについても厳格に会計処理することで、重要性の高い会計情報がこれら重要性の乏しい会計情報の中に埋没しかねない。実務上は頻繁に援用されるのはこのためである。この時重要性が乏しいかどうかの判断は、利害関係者における意思決定に影響を及ぼすかどうかによって判断される。その具体的な判断基準は、ある項目の金額の大小から判断する量的重要性と、ある項目の内容から判断する質的重要性とがある。ある項目の金額の計算経済性と相対的重要性(金額の大小)または相対的危険性(後述の利益操作)とを考慮して、重要性の判断を行う必要がある。
① 量的重要性の例(金額の大小による判断)
a 特別損益項目うち、その金額の僅少なものまたは毎期経常的に発生するものについて経常損益計算に含めて表示する(「企業会計原則注解」注12)。
b 法人税等の更正決定等による追徴税額及び還付税額の金額が僅少なものについて(重要性に乏しい場合)、当期の負担に属するものに含めて表示する(「企業会計原則」注13)。
② 質的重要性の例(項目を設けるかどうか、どこに設けるかの判断)
a 仮払金、仮受金、未決算等の勘定について、その性質を示す独立科目で表示する(「企業会計原則」第三・四(一)、(二))。
b 債権債務のうち、役員等企業内部のものに対するものや親会社または子会社に対するものについて独立科目もしくは注記により表示する(「企業会計原則」第三・四(一)D、(二)C)。
※②のa・bでこのような処理を求められている理由は、貸借対照表にそのまま記載すると、利害関係者が財政状態を判断し誤る可能性があるのみでなく、経営者が利益を隠蔽し架空資産・架空利益を計上するために用いる恐れがあるため、明瞭に表示する必要があることによる。
また重要性の原則には、重要性の高いものについての厳密な処理表示を要請する原則という積極的側面もある。この側面は、明文化されていないが、企業会計原則の一般原則の中に暗示的に述べられており、一般原則を厳格に適用することにより、積極的側面が充足される。上記の質的重要性は重要性の原則の積極的側面についての適用例といえる。
2.適用例
重要性の原則は、会計処理と表示の両面において適用され、会計処理面では正規の簿記の原則と関係し、表示面では明瞭性の原則と関係がある。
① 消耗品、消耗工具器具備品その他の貯蔵品等のうち、重要性の乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができる。
② 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。
③ 引当金のうち、重要性の乏しいものについては、これを計上しないことができる。
④ たな卸資産の取得原価に含められる引取費用、関税、買入事務費、移管費、保管費等の付
重要性の原則
重要性の原則は、「企業会計原則」において、一般原則中の正規の簿記の原則、明瞭性の原則および貸借対照表完全性の原則の注解として位置し、形式上は一般原則に含まれてはいないが、実務上は頻繁に援用される原則である。
1.重要性の原則の意義
重要性の原則は、「企業会計原則注解」・注1にあるように、重要性の乏しいものについては簡便な処理表示を容認するという原則である(消極的側面)。つまり厳密な会計処理や表示を行うために必要なコストと、その結果得られるベネフィットとを比較し、ベネフィットよりもコストが過大な場合は、簡便な処理表示を認めるということである。また重要性の乏しいものについても厳格に会計処理することで、重要性の高い会計情報がこれら重要性の乏しい会計情報の中に埋没しかねない。実務上は頻繁に援用されるのはこのためである。この時重要性が乏しいかどうかの判断は、利害関係者における意思決定に影響を及ぼすかどうかによって判断される。その具体的な判断基準は、ある項目の金額の大小から判断する量的重要性と、ある項目の内容から判断する質的重要性とがある。ある項目の金額の計算経済性と相対的重要性(金...