トランスジェンダーの刑事上の処遇
今月に入って、麻薬所持罪の疑いで逮捕された、男性から女性への性転換手術を受けたことを公にしたことで知られる、タレントのカルーセル麻紀(戸籍名:平原徹男)容疑者の、拘置所内での処遇について、芸能誌などで話題になっている。 この点、カルーセル麻紀容疑者が男子房に入れられて、男性用の衣料を支給されていることにつき、TG関係のネットだけでなく一部の週刊誌でも異議の声が上がっているが、一方で容疑者本人が希望して、男子房に収容されている、との報道もある。 ここで、トランスジェンダーの刑事手続き上の処遇に関する性別ついては、どのように扱うべきかを考えてみよう。 思うに、刑事被疑者・被告人といえども、刑が確定するまで適正な手続を受ける権利(憲法31条)がある以上、取調べや裁判上において、防御を適切に行う環境を確保するために、拘置所内での処遇においてもトランスジェンダーの特殊性に配慮すべきと考える。すなわち、性別に関する処遇は、基本的に被疑者・被告人本人の選択に委ねられるべきである。 もっとも、一方で拘置所内での規律の維持という必要もあるので、すべて本人の選択を通すこともできないであろう。例えばいわゆる雑居房にトランスジェンダーである者を収容すると、暴行や性犯罪が発生する恐れがあり、本人または周りの者の安全が脅かされる恐れがある。 このため、可能な限り独居房に収容するなどの配慮を行うべきである。それが不可能な場合、性別適合手術(性転換手術)を受けているか否かを基準に、性別に関する処遇を決定すべきである(これは私見による戸籍上の性別変更の基準とは異なる基準であるが、拘置所内という特殊な環境を考慮したものである)。
一方、支給する衣料、髪型その他の点については、可能な限り本人の選択を尊重すべきである。また、ホルモン療法を受けている場合は、他の持病の場合の薬の使用と同様、これを認めるべきである。 次に、刑が確定し、受刑者となった場合についても、単純に戸籍上の性別(性別変更がなされていない場合)に基づき、性別の処遇を決めることは、受刑者本人に確定した刑罰以上の苦痛を与えることになり、やはり憲法31条に反すると考えられる。このため、収監については被疑者・被告人の場合と同様のことが言える。 また、刑務作業については、一般にも性別分業と思われるようなことが行われているが、男女共同参画社会の観点から、これを撤廃していくことが望ましいと言える。 (Oct.2001)
資料提供先→ http://homepage2.nifty.com/mtforum/ge013.htm