理性の考古学--フーコーと科学思想史

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    資料の原本内容

    G・ガッティング『理性の考古学--フーコーと科学思想史』
    産業図書、一九九二年、14 + 510頁。
    訳者あとがき
     本書は Garry Gutting, Michel Foucault's archaeology of scientific reason, Cambridge University Press, 1989 の全訳である。
     著者ガッティングは、クーンの科学論がさまざまな学問分野におよぼしたインパクトをまとめたアンソロジー『パラダイムと革命:トマス・クーンの科学論の評価と応用』Paradigms and revolutions: Appraisals and applications of Thomas Kuhn's philosophy of science, University of Notre Dame Press, 1980を編集している。その「編者序文」でガッティングは、もっぱら英米圏でかまびすしく論議されてきたクーンの科学論は、ヨーロッパ大陸における最新の思想潮流、たとえばハバーマスの批判理論やフーコーの思想史と切り結ぶ論点をもっているのではないかといち早く指摘していた。同様の問題提起はより具体的なかたちで、ガッティングの最近の論考「大陸哲学と科学史・科学哲学」(R. C. Olby, G. N. Cantor, J. R. R. Christie, and M. J. S. Hodge(eds.), Companion to the history of science, Routledge, 1990 所収) で展開されている。ともあれ、ガッティングがかなり以前から本書の構想--科学論の伝統のなかにフーコーを位置づける--をあたためてきたことは確かであろう。
     さて、フーコー流の思想史研究の方法を科学史研究に適用したW・C・アンダーソンの野心的な書物『図書室と実験室の間』Between the library and the laboratory・the language of chemistry in Eighteenth-centry France, The Johns Hopkins University Press, 1984を通じて、科学史研究にフーコーのインパクトがおよびつつある状況にすくなからぬ衝撃を受けた訳者の一人(成定)が、その印象を綴った短文「フーコーと科学史」(『現代思想』、一九九○年九月号、「研究手帖」)が、たまたま炯眼な編集者江面竹彦氏の眼にとまったことが本書誕生のきっかけであった。成定が短文の中で言及したガッティングの著作の邦訳可能性について江面氏から打診があったのである。成定単独では内容的にも分量的にも翻訳を引き受けることなど思いもおよばなかったが、幸い金森・大谷両名が加わることになってようやく翻訳態勢が整った。爾来、約二年間の作業を経て、本書は日の目を見るに至った。
     翻訳にあたっては、三人の訳者のこれまでの仕事や問題関心に応じて、第一章から第三章までは金森、第四章から第六章までは大谷、それ以外は成定がそれぞれ担当した。下訳完成後、訳者の間で互いに訳文・訳語をクロス・チェックし、主として成定が表記その他の統一にあたったが、訳者三人は概ね各自の担当部分に翻訳の責任を負っている。
     フーコー論における本書の位置を見定めるために巻末に金森による「解題」を付した。多くの読者にとって有用なガイドとなりうると確信している。もっとも、本書第七章に顕著なガッティングの「合理主義的な」フーコー解釈については、三人の訳者の間で必ずしも意見が一致しているわけではない。さらにいえば、本書の評価にかかわる重要な論点の一つがここにあることは明らかであり、読者の共感を呼ぶと同時に批判の対象ともなるだろう。訳業に携わったものとして、我が国の読書界で本書がどのように受けとめられるか大いに楽しみである。
     最後に、本書の刊行を企画提案され、その後も訳者らを叱咤激励して刊行に漕ぎ着けられた江面竹彦氏と、煩瑳きわまりない編集実務を担当して下さった西川宏氏に敬意と感謝を表明させていただきたい。(一九九二年七月)(金森修氏、大谷隆のぶ氏と共訳)
    資料提供先→  http://home.hiroshima-u.ac.jp/nkaoru/Archaeology.html

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