2-13混合エントロピー

閲覧数2,558
ダウンロード数11
履歴確認

    • ページ数 : 2ページ
    • 全体公開

    タグ

    資料の原本内容

    混合エントロピー
    ここにもエントロピー
     お互いに化学反応を起こさない2種類の気体を容器の中に入れておいてやれば、かき混ぜなくても、やがて勝手に均一に混じり合う。 そして、いつまで待っても再び分離するということはない。 一方通行の現象だ。
     これは不可逆過程であり、エントロピーの増大で説明できる。 初めにそれぞれの気体は容器の右と左に完全に分かれているとしよう。 それぞれの気体を別々に考える。 気体は容器の隅に集まっているより、容器全体に広がる方が自然だ。 そしてその方がエントロピーが高い。 エントロピーが変化すると熱の出入りがあるようなイメージを持ってしまっているかも知れないが、それは準静的過程の話である。 不可逆過程では熱の変化なしにエントロピーは変化する。 気体が真空中に自由膨張する話と同じであり、理想気体の場合には温度の変化はないのだった。
     それぞれの気体が、それぞれに容器一杯にまで広がるとき、全体のエントロピーは元の状態と比べてどれだけ増加するのだろうか。 それぞれの自由膨張によるエントロピー増加を計算して加え合わせてやればいい。 自由膨張によるエントロピー変化の計算は面倒くさかったのでこれまでやらないできたが、こんなところで関わってくるとは予想していなかった。 気になるのでやっておこう。
    (ここに計算が入る)
     これはつまり、気体の混合によるエントロピー変化、すなわち「混合エントロピー」である。
    パラドックス
     ところがここで疑問が生じる。 ここまで2種類の気体を考えて計算してきたが、もしそれぞれの気体が全く同じ種類だったとしても同じ計算が成り立つのではないだろうか。 しかしその場合には混じる前と混じった後は何も変わらない。 よってエントロピーの変化だってあるわけがない。
     これは一体どういうわけだ。 混合エントロピーという概念はいつでも使えるわけではないというのか。 同一気体とそうでない場合とで、当てはめたり当てはめなかったり、人為的に考え方を変えないといけないのか。 しかし論理的にどこに差があるというのだろう。 自由膨張と同じ話を持ってきただけではないか。 ひょっとすると、そもそもエントロピーという概念自体が学問として怪しいのかも知れない。 この問題を「ギブスのパラドックス」と呼ぶ。
     この問題はすでに「統計力学」によって解決している。 エントロピーとはそもそも何なのか、という明快な解釈を統計力学が示してくれたお陰で、「このような差が生じるのは当たり前だね」ということで落ち着いたのである。 異なる分子が混じればエントロピーは増えるし、同一分子の場合にはエントロピーは増えない。 その論理的な理屈が矛盾無く示されたわけだ。
     残念ながら熱力学の範囲では納得のいく説明は無理であるから、下手な説明をして読者を煙に巻くよりはむしろ、今の段階では何も言わないでおくことにしよう。
    資料提供先→  http://homepage2.nifty.com/eman/thermo/mixing.html

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。