空中浮揚に要するエネルギー

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    空中浮揚に要するエネルギー
    空中にじっとしているだけでエネルギーを消費する。
    中学生のまじめな疑問
     まだ力学について大した知識を持っていなかった中学生の頃、このようなことを大変疑問に思っていた。  ヘリコプターは空中静止できる。 学校では移動しなければ仕事をしたことにはならないと習った。上にも下にも移動してないのに、どうしてエネルギーが必要なのだろう? 空中にとどまるということは一体どういうことなのだろうか?
     当時は㈱ナムコの「ゼビウス」というシューティング・ゲームがその独特な世界観と設定の深さから爆発的な人気を呼んでいる時代であった。 私もその世界にどっぷり浸って楽しんでいたものである。  その中に出てくる浮動空中要塞「アンドアジェネシス」は一体どのような原理で空中に浮いているのだろうか、とか、その場合もやはりエネルギーは消費するのだろうか?とか、その下に広がる森の木々はその巨体(全長8000mという設定であった)を空中に支えている反動でぺっしゃんこになりはしないのだろうか、とか色々考えたものである。  未だに反重力装置の原理については何も答えることは出来ないが、ヘリコプターが空中に静止している時のエネルギーについてならばいくらかのことを答えられるようになった。  とても簡単なことではあるのだが、面白い話なので 少し説明させていただこうと思う。
    飛ぶためには反動が要る
     ヘリコプターが空中に静止している時、ヘリコプターは確かに空中に止まっていてエネルギーを消費しないように思えるのだが、なぜ止まっていられるのかを考える必要がある。  それは、空気を下に向かって放り出しているからである。空気を下に放り投げた反動で浮いていられるのである。  このことが中学生の時には理解できないでいた。あの頃は、空気を地面にたたきつけた反動で飛んでいると思っていた。 地面を押さなければ飛べないと感じていたのである。 実は投げた空気が地面に届かなくても関係ない。 はるか上空に飛んでいるヘリコプターの真下に立っていてもヘリコプターの重みを受けることは無いではないか。空気の力で地面を叩きつけているのではなく、空気を下に投げた反動だけで飛べるのである。( 注意:厳密には違う部分もある )
     確かにヘリ自身は空中で動かなければエネルギーを消費しない。 ところが重力はヘリコプターに常に下向きの運動量を与えようとするので、空中静止するためにはその運動量を帳消しにしてやる必要がある。 そのためには周りの空気に下向きの運動量を与えて反動を得なければならない。
     このようなわけで、空気を下に放り投げるだけのエネルギーを消費するのである。 それは空気の運動エネルギーになって撒き散らされてゆく。
     ロケットの場合もよく似ている。ロケットを発射する時、ロケット本体はゆっくりと地面を離れて上昇を始める。 あれはロケットの推力がロケット本体を持ち上げるほどにまで上昇して、ようやく本体が上向きの力を受けて飛び上がるのである。 それまでの間、ロケット本体がまだ動いていなくてもエネルギーは消費(浪費?)されている。
    消費エネルギーを計算しよう
     では、その時のエネルギーはどうやって計算できるのであろうか?  実は答えは一つには決まらない。
     例えば、ある人が石ころを下に向かって投げて、その反動で宙に浮かぼうという無謀なことを考えたとする。  体重60kgの彼は毎秒1gの物体を秒速600km(!)で打ち出し続けても浮いていることが出来るし、毎秒6tの物体を秒速10cmで打ち出しても浮くことが出

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    資料の原本内容

    空中浮揚に要するエネルギー
    空中にじっとしているだけでエネルギーを消費する。
    中学生のまじめな疑問
     まだ力学について大した知識を持っていなかった中学生の頃、このようなことを大変疑問に思っていた。  ヘリコプターは空中静止できる。 学校では移動しなければ仕事をしたことにはならないと習った。上にも下にも移動してないのに、どうしてエネルギーが必要なのだろう? 空中にとどまるということは一体どういうことなのだろうか?
     当時は㈱ナムコの「ゼビウス」というシューティング・ゲームがその独特な世界観と設定の深さから爆発的な人気を呼んでいる時代であった。 私もその世界にどっぷり浸って楽しんでいたものである。  その中に出てくる浮動空中要塞「アンドアジェネシス」は一体どのような原理で空中に浮いているのだろうか、とか、その場合もやはりエネルギーは消費するのだろうか?とか、その下に広がる森の木々はその巨体(全長8000mという設定であった)を空中に支えている反動でぺっしゃんこになりはしないのだろうか、とか色々考えたものである。  未だに反重力装置の原理については何も答えることは出来ないが、ヘリコプターが空中に静止している時のエネルギーについてならばいくらかのことを答えられるようになった。  とても簡単なことではあるのだが、面白い話なので 少し説明させていただこうと思う。
    飛ぶためには反動が要る
     ヘリコプターが空中に静止している時、ヘリコプターは確かに空中に止まっていてエネルギーを消費しないように思えるのだが、なぜ止まっていられるのかを考える必要がある。  それは、空気を下に向かって放り出しているからである。空気を下に放り投げた反動で浮いていられるのである。  このことが中学生の時には理解できないでいた。あの頃は、空気を地面にたたきつけた反動で飛んでいると思っていた。 地面を押さなければ飛べないと感じていたのである。 実は投げた空気が地面に届かなくても関係ない。 はるか上空に飛んでいるヘリコプターの真下に立っていてもヘリコプターの重みを受けることは無いではないか。空気の力で地面を叩きつけているのではなく、空気を下に投げた反動だけで飛べるのである。( 注意:厳密には違う部分もある )
     確かにヘリ自身は空中で動かなければエネルギーを消費しない。 ところが重力はヘリコプターに常に下向きの運動量を与えようとするので、空中静止するためにはその運動量を帳消しにしてやる必要がある。 そのためには周りの空気に下向きの運動量を与えて反動を得なければならない。
     このようなわけで、空気を下に放り投げるだけのエネルギーを消費するのである。 それは空気の運動エネルギーになって撒き散らされてゆく。
     ロケットの場合もよく似ている。ロケットを発射する時、ロケット本体はゆっくりと地面を離れて上昇を始める。 あれはロケットの推力がロケット本体を持ち上げるほどにまで上昇して、ようやく本体が上向きの力を受けて飛び上がるのである。 それまでの間、ロケット本体がまだ動いていなくてもエネルギーは消費(浪費?)されている。
    消費エネルギーを計算しよう
     では、その時のエネルギーはどうやって計算できるのであろうか?  実は答えは一つには決まらない。
     例えば、ある人が石ころを下に向かって投げて、その反動で宙に浮かぼうという無謀なことを考えたとする。  体重60kgの彼は毎秒1gの物体を秒速600km(!)で打ち出し続けても浮いていることが出来るし、毎秒6tの物体を秒速10cmで打ち出しても浮くことが出来る。 前者の消費エネルギーは18万kWであり、後者の場合わずかに30Wでいい。 要は、単位時間当たりに与える運動量が釣り合ってさえいればいいのだ。
     しかし、後者の場合の毎秒6tもの質量はどこからもって来たらいいのであろうか? 6tの物体を下に打ち出すというよりは、上から都合よく降ってきてくれた岩を次々とよじ登るという光景に近い。 都合良く次々にゆっくりと降ってきてくれればいいが、普通そうはいかない。 よって自分で持って行かなくてはならないが、それでは浮き上がるためにもっと大きな力がいる。  ヘリの場合は都合良く周りに空気があるのでそれを下方に加速してやればよいわけだ。
    宙をつかむような話
     さて、この結果は反重力装置を作る際のヒントを与えてくれている。(^^;  前の例で分かるように、反作用で宙に浮く場合、なるべく質量の大きな物を押し出してやれば消費エネルギーは低く押さえられる。質量無限大の物を用意すれば、宙に静止するためにエネルギーは要らない筈だ。 質量無限大のもの。すなわち、宇宙そのもの。 空間そのものをつかむことが出来ればいいのである。 しかし、どうやって? 原理的には地上に梯子を立ててそれにつかまっているのと何の変わりもないのでつまらない話ではある。 しかしもし出来ればそれだけでも革命的である。 ロケットを使うよりはるかに少ないエネルギーで物資を宇宙へ運べることになるのだ。 この理由で宇宙開発の将来について語った本では「軌道エレベータ」の建設の話が良く出てくる。
     ああ、空間をつかむことが出来たらなぁ。
     しかし、この話は楽観的過ぎる。 空間をつかむことが出来たとすれば相対論の問題に関わってきてしまうからである。 即ち、ある慣性系と別の慣性系が同等であるという要求を満たしているかどうかということが問題になってくる。 だが、ここでこの問題に立ち入ることはしない。まだそのような議論に値するほど現実的なことを扱っているわけではないからである。
     現在、エネルギーをそのままで加速に使う方法はない。何か(光を含む)を噴射してその反動を用いねばならない。そのための重量物が必要である。 結局、人間は何かをつかんで後ろに放り出さなくては前に進めないわけだ。 何も手放したくなければ、周りにあるものをつかむしかない。
    資料提供先→  http://homepage2.nifty.com/eman/dynamics/float.html

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