テーマ : 『肝初回通過効果』を受ける投与法、受けない投与法
第 99 回薬剤師国家試験 問題 41
肝初回通過効果を受ける可能性が高い投与経路はどれか。1 つ選べ。
1.経口投与
2.舌下投与
3.経皮投与
4.経肺投与
5.経鼻投与
お薬とはいえ、もともと体にあったものではないので、体は毒と考えて排除
するシステムを持っているんだ。
口から入れたお薬は食道、胃を通過し、小腸で吸収を受けるよね。
小腸までは体の外部だけど、小腸から吸収された後は体の内部だ。迂闊にな
んでも体の内部に入れてたら危険極まりない!!だからここで、体は大型の関
所を設けている。
それこそが肝臓だね。小腸から門脈という道路を通って肝臓へ。
小腸から吸収されたお薬はここで初めの一撃を受け、簡単には中に入れても
らえないのだ。一撃とは具体的には代謝であり、体にとって影響のないものや、
ゴミとして捨てやすい形にして、最終的には体外に捨てられる。
この『肝臓による一撃』こそが『肝初回通過効果』であり、お薬を作ってい
る研究者からすれば頭の痛い問題だよね。この肝初回通過効果のせいで、経口
投与したほとんどのお薬は、体の中に全部は入っていかない。目減りした状態
でしか、内部には入っていかないんだね。
こうして目減りして生き残ったお薬だけが体の中(体循環)に入って行く。
もちろんこの肝初回通過効果のおかげで、薬だけでなく本当の毒から身を守
れているわけだから、門番としては頼もしいんだけどね。
“小腸”⇒“門脈”⇒“肝臓”⇒“体循環”
この基本的な流れは絶対に覚えておこう。
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第 99 回薬剤師国家試験 問題 41
というわけでこの問題の回答は、1.“経口投与”が正解だ。
口から食べる(経口)という作業は人間を含む多くの生物にとって、最も外
部の物質を大量に取り込む手段であり、同時に危険な作業でもある。だからこ
そ吸収の過程で門番(肝臓)を置くことで、少しでも害を減らそうとしている
んだね。
よって、逆に言えば経口以外の吸収方法は人体にとっては“想定外”なこと
であり、この肝初回通過効果を受けない経路が存在する。
その具体例が、舌下投与・経皮投与・経肺投与・経鼻投与である。
一方で、経口投与以外でも肝初回通過効果を受けてしまう投与方法があるよ。
それが“腹腔内投与”と“直腸(上部)投与”
直腸投与とは要するに坐薬のことだよね。坐薬は直腸下部なら肝初回通過効
果を避ける事ができるけど、直腸上部では門番の一撃を食らってしまうんだ。
直腸上部の例外は試験でもよく聞かれるので、しっかり覚えておこう。
また、腹腔内投与も意外な感じがするよね。
腹腔内に投与したお薬は、腹腔内にある腹膜というシートにはびこる血管に
吸収されていく。
ざっくりと説明すると、この腹膜にはびこる血管が門脈に集まる構造をして
いるから肝初回通過効果を受けてしまうんだ。
右の写真は腹膜(動物)の写真だ。
たくさんの血管が配備されているのが
わかるね。
これらの血管が最終的には門脈に
集まり、血液が肝臓へ運ばれていくので
肝初回通過効果を受けるんだ。
引用:Go! Joppari 様
http://jopparika.exblog.jp/12463788
第 99 回薬剤師国家試験 問題 41
腹腔内投与は一般的には注射(穿刺)で行うものだけど、わざわざ体に針を
指して薬を投与するなら、静脈注射の方が肝初回通過効果を受けなくて有利じ
ゃないかと思うでしょ。
でもね、腹腔内投与は確かに肝初回通過効果を受けてしまうものの、この腹
膜の血管の表面積がとても広いためお薬の吸収自体はとても早いのが特徴だ。
しかも静脈注射にはない特徴である、
“比較的大量の液量を 1 度に投与できる”
ことも大切だ。静注ではそれが出来ないから点滴という選択肢を取らなければ
ならない。
それぞれの投与法に、特徴とメリット・デメリットがあるので区別をつけて
理解しておこうね。
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