憲法34条前段は身体拘束された被疑者の弁護人依頼権を保障している。また憲法37条3項は被告人の弁護人依頼権を保障している。刑事訴訟法は、さらに被疑者の身体拘束の有無を問わず弁護人選任権を有すると規定している(30条1項)。
現行刑事訴訟法は当事者主義的訴訟構造を採用しており、訴追者たる検察官と被告人およびそれに準じる被疑者は対等な当事者として扱われる。しかし、検察官と被告人・被疑者とでは法律知識、資料収集の能力等で大きな差がある。したがって、弁護人依頼権は被告人・被疑者の権利を保護し、実質的当事者主義をはかるために非常に重要な権利であり、弁護人は被告人・被疑者の単なる訴訟代理人にとどまらず、保護者としての役割をも果たす。これにより被疑者・被告人は実質的に十分で有効な弁護を受けることができる。
それでは弁護人は各訴訟手続段階においてどのような役割を果たしているか。
捜査段階での役割について。捜査段階の弁護人の役割として最も重要なものは、身体を拘束されている被疑者との接見交通権である(憲法34条前段、法39条1項)。すなわち、弁護人は接見交通を通じて密行性が高い状況下での取り調べに伴...