介護保険制度の目的、理念

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    介護保険制度の目的、理念について(制度導入の社会的背景を踏まえて)
    1.介護保険制度導入の社会的背景
    わが国に介護保険制度ができた背景には、世界で類を見ないスピードで少子・高齢化が進行し、介護を必要とする高齢者が急速に増加したことと、介護への不安が高まったことがあげられる。65歳以上の人口割合の推移をみると、昭和25年(1950年)以降年を追って上昇し、60年(1985年)には10.3%と初めて10%を超え、平成7年(1995年)には14.5%となった。(平成15年には19.0%と、総人口のおよそ5人に1人の割合となっている。)65歳以上の人口の割合は今後も上昇を続け、平成27年(2015年)には総人口の26.0%(3277万人)と、およそ4人に1人が65歳以上になると見込まれ、50年後には65歳以上の高齢者人口が総人口の3分の1に達すると推測されている。現在、寝たきり・認知症・虚弱老人を含む要介護者の数は約260万人だが、2030年には一気に530万人に上ると推測されている。
    これまでの介護は、核家族化や介護者自身の高齢化、介護期間の長期化などにより、家族が大きな負担を抱えながら行われてきたものであった。さらに、制度施行以前は、介護サービスの種類によって、福祉・保健・医療の各制度に分けられており、行政による決定が行われていたため、サービスの選択や利用がしにくいものであった。また、費用負担について、家族と本人の収入に応じて負担額が決定するという応能負担となっていたが、利用者の自己負担額が不公平な点があり、家計への負担が重すぎるといったケースも少なくなかった。その一方で、本来は治療を目的とする医療機関への「社会的入院」という現象も生み、国民医療費約30兆円の三分の一を老人医療費が占め、健康保険制度や国の財政を圧迫していた。
    このようなことから、医療・福祉のサービスを統合化し、利用者の意思が尊重されるともに多様で利用しやすい介護サービスの提供が強く求められてきた。また、介護に対する不安や負担の増大といった問題は、個人や家族だけのものではなく、社会的なものと考えられるようになり、介護を社会全体で支えるというしくみについての検討がなされ、平成12年4月1日介護保険制度が導入された。
    2.介護保険制度の目的
    介護保険制度の目的について、介護保険法第1条において「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病などにより要介護状態となり、入浴、排泄、食事などの介護、機能訓練並びに看護及び両用上の管理その他医療を要すものなどについて、これらのものがその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係わる給付を行うため、国民の協同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の促進を図ることを目的とする」と規定されている。この条文により、介護保険の目的は、社会保険方式を導入する事によって、福祉・保健・医療のサービスを国民全体が支え、福祉サービスも保健医療サービスも同様の利用者手続き、利用者負担で、利用者の選択により総合的に利用できる仕組みを構築することをねらいとし、その介護保健サービスの利用によって「高齢者は自分の意思のままに自分らしく生きる事」を支援するという自立支援 が基本と考えられるようになった。具体的には、①高齢者本人や40歳以上の国民が保険料を負担し、財源を税金と保険料それぞれ2分の1ずつとし、要介護度状態に応じて市区町村がサービスを提供す

    資料の原本内容

    介護保険制度の目的、理念について(制度導入の社会的背景を踏まえて)
    1.介護保険制度導入の社会的背景
    わが国に介護保険制度ができた背景には、世界で類を見ないスピードで少子・高齢化が進行し、介護を必要とする高齢者が急速に増加したことと、介護への不安が高まったことがあげられる。65歳以上の人口割合の推移をみると、昭和25年(1950年)以降年を追って上昇し、60年(1985年)には10.3%と初めて10%を超え、平成7年(1995年)には14.5%となった。(平成15年には19.0%と、総人口のおよそ5人に1人の割合となっている。)65歳以上の人口の割合は今後も上昇を続け、平成27年(2015年)には総人口の26.0%(3277万人)と、およそ4人に1人が65歳以上になると見込まれ、50年後には65歳以上の高齢者人口が総人口の3分の1に達すると推測されている。現在、寝たきり・認知症・虚弱老人を含む要介護者の数は約260万人だが、2030年には一気に530万人に上ると推測されている。
    これまでの介護は、核家族化や介護者自身の高齢化、介護期間の長期化などにより、家族が大きな負担を抱えながら行われてきたものであった。さらに、制度施行以前は、介護サービスの種類によって、福祉・保健・医療の各制度に分けられており、行政による決定が行われていたため、サービスの選択や利用がしにくいものであった。また、費用負担について、家族と本人の収入に応じて負担額が決定するという応能負担となっていたが、利用者の自己負担額が不公平な点があり、家計への負担が重すぎるといったケースも少なくなかった。その一方で、本来は治療を目的とする医療機関への「社会的入院」という現象も生み、国民医療費約30兆円の三分の一を老人医療費が占め、健康保険制度や国の財政を圧迫していた。
    このようなことから、医療・福祉のサービスを統合化し、利用者の意思が尊重されるともに多様で利用しやすい介護サービスの提供が強く求められてきた。また、介護に対する不安や負担の増大といった問題は、個人や家族だけのものではなく、社会的なものと考えられるようになり、介護を社会全体で支えるというしくみについての検討がなされ、平成12年4月1日介護保険制度が導入された。
    2.介護保険制度の目的
    介護保険制度の目的について、介護保険法第1条において「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病などにより要介護状態となり、入浴、排泄、食事などの介護、機能訓練並びに看護及び両用上の管理その他医療を要すものなどについて、これらのものがその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係わる給付を行うため、国民の協同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の促進を図ることを目的とする」と規定されている。この条文により、介護保険の目的は、社会保険方式を導入する事によって、福祉・保健・医療のサービスを国民全体が支え、福祉サービスも保健医療サービスも同様の利用者手続き、利用者負担で、利用者の選択により総合的に利用できる仕組みを構築することをねらいとし、その介護保健サービスの利用によって「高齢者は自分の意思のままに自分らしく生きる事」を支援するという自立支援 が基本と考えられるようになった。具体的には、①高齢者本人や40歳以上の国民が保険料を負担し、財源を税金と保険料それぞれ2分の1ずつとし、要介護度状態に応じて市区町村がサービスを提供することで、サービスにかかる財源とサービスの提供を将来的に確保すること,②介護サービスの利用者が、多くの選択肢の中から自由にサービスを選択して利用できるようにすること(これまでの行政により決定される「措置」から、利用者本人が決定する「契約」へ),③これまで福祉・保健・医療の各制度により、それぞれが提供していた「介護」の部分を一体化し、総合的に利用できるシステムにすること,④画一的でなく、多様で効率的なサービスを提供すること(サービスを提供する市区町村の作成する介護保険事業計画に利用者の意見を反映させたり、民間企業やNPOなど様々な業者のサービス参入による競争原理を導入し、サービスの向上をはかる),⑤社会的入院の是正などにより、医療費を効率化すること,である。
    介護保険は、以前の制度に比べ費用を効率化するとともに、今後の社会保障の構造改革の道筋をつける第1歩となった。
    3.介護保険制度の理念
    介護保険法第2条において「被保険者の要介護状態又は要介護状態となるおそれがある状態に関し、必要な保険給付を行うもの」とされ、次のような基本理念を実現しようとしている。
    (1) 要介護状態の軽減・予防の重視(保有する心身能力の活用支援) (2) 医療との十分な連携 (3) 被保険者の自由な選択に資する総合的・効率的なサービスの提供 (4) 民間活力の積極的導入 (5) 家庭における自立した日常生活の重視  介護保険法はこのような理念に基づいた介護サービスを提供するために、その具体的なサービスの提供方法を「介護支援サービス(ケアマネジメント)」として位置づけている。ケアマネジメントとは、自立支援を目的に、一人ひとりの解決すべき課題(ニーズ)を充足させるために、多くの機関や専門職から提供される福祉・保健・医療のサービス、インフォーマルなサービスなど多くの社会資源を結びつけ、調整、フォローする一連の手続きである。その方法を実践するための中心的な役割を担う専門職者「介護支援専門員(ケアマネジャー)が誕生した。また、その援助過程についても制度に定められている。
     介護保険制度の理念を実現していくためには、ケアマネジメントの役割を果たすことが重要な鍵を握っている。
    4.介護保険の申請からサービスの実施
    介護保険の申請からサービスの実施に至るまでの過程の概要について以下にまとめる。
    ①窓口(市区町村の福祉担当部署)への申請:対象者は介護保険料を支払っている40歳以上の方で、申請は利用者自身や家族、居宅事業所・老人健康保健施設や特別養護老人ホームなどの担当者が代行申請することも可能。
    ②訪問調査・一次判定:訪問調査員が利用者や家族と面接し、その結果をコンピューターにて判断。
    ③介護認定審査会による審査・二次判定:福祉・保健・医療の専門家や学識経験者による審査会にて最終的な介護度の認定を行う。
    ④介護認定:申請から30日以内に認定結果が本人宛に、介護の必要な度合い(要支援→平成18年4月より要支援1と要支援2に分けられた,要介護1~5)と、それぞれの段階による月々の利用限度額が通知される。
    ⑤サービスの選択:本人・家族が居宅サービス・施設サービス・地域密着サービスなど選択する。自立(非該当)となった場合でも介護予防サービスが受けられる。
    ⑥サービスの実施と利用:ケアマネジャーによるケアマネジメント(計画作成・サービス利用の結びつけ・実施・フォロー)がなされる。介護サービス利用料はかかった費用の一割を負担する。
     介護認定の更新は定期的に行われ、状態変化に応じた区分変更や介護認定結果への不服申請なども行われ、公平にサービスの利用ができるよう配慮がなされている。
    5.考察
     今まで述べてきたように、介護保険制度は高齢者本人や家族、社会全体が抱える「介護」を支えるシステムとして生まれてきた。介護保険制度導入以前と比べ、介護の負担は軽減され、サービスの利用がしやすく、介護の質も向上してきていると言われている。これらは、ケアマネジャーの存在が、介護保険制度を多くの人にとってわかりやすく、身近なものにしてきた結果が大きいと思われる。介護保険制度は定期的に見直し・改正されているが、さらに多様化していく介護ニーズに応え、国民の未来を豊かで健やかな生活を保障していくために、さらなる制度の充実とケアマネジャーの育成を図っていく必要があるだろう。
    〈参考文献〉
    ①中島恒雄編著 保育児童福祉要説 中央法規
    ②介護支援専門員テキスト編集委員会 介護支援専門員基本テキスト 長寿社会開発センター
    ③三浦文夫・竹内孝仁編著 介護 サービスの基礎知識 自由国民社 2001年
    ④服部真理子 図解でわかる介護保険のしくみ 日本実業出版社 1999年
    ⑤http://www.millea-kaigo.ne.jp/kaigo/hoken.html
    ⑥http://www.simple2-j.com/acg/hn/hoken/index.html

    コメント2件

    dyjoe 非購入
    参考になりました~
    2008/12/16 5:27 (15年10ヶ月前)

    kana.s 非購入
    参考になりました。ありがとうございます。
    2011/11/27 4:13 (13年前)

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