資料:2件
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予言の自己成就
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物象化の認識上の帰結は、社会現象の原因と結果をしばしば取り違えてしまうことがある。一連の活動や意識や関係の〈結果〉として生じた現象を、逆に一連の現象の〈原因〉と錯視してしまうのである。社会現象にはしばしば「結果が原因となり、原因が結果となる」因果系列のメビウスの輪が生じる。この物象化的錯視はそれ自体が社会の構成要素として作用し、少々やっかいな問題を社会にもたらす。これについて明晰に指摘したのは、アメリカの社会学者ロバート・K・マートンだった。彼は、「自己成就する予言」(self-fulfilling prophecy)として、いわゆる「予言の自己成就」のメカニズムを明確に説明した。マートンは社会学者ウィリアム・I・トマスの「もし、ひとが状況を真実(リアル)であると決めれば、その状況は結果においても真実(リアル)である」という記述に着目し、これを「トマスの定理」と呼んだ。そしてそれを展開する形で「予言の自己成就」について論じた。「予言の自己成就」という概念はロバート・K・マートンに由来している。
社会学の自己言及性は4つの論点に分けられ、その中の一つに「予言の自己成就」がある。「予言の自己成就」とは、予言されることによって予言された事態が現実のものになるという社会的メカニズムのことである。人びとが自分たちの共有している知識に基づいて行為することによって、その知識が現実のものとなって自己成就する。この様なしばしば悲劇的な循環運動こそ、自然現象とは根本的に異なる「社会」現象特有のものである。この循環運動を悲劇的にしないためには、個々の社会現象に対する私たちの認識を反省的なものにしていくことが必要である。私たちの常識のなかに潜む物象化傾向を排除していく知的努力が必要なのであり、それゆえ社会学は「自明化された常識を疑う」ことから始める。「脱常識」が要請されるのである。
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