アイヌ民族は、「自分たちに役立つもの」あるいは「自分たちの力が及ばないもの」を神(カムイ)とみなし、日々の生活のなかで、祈り、さまざまな儀礼を行っていた。アイヌにとってのカムイとは、単に畏れ、崇い、従うだけの絶対的な存在ではなく、人間と対等であり、対話をなし得るパートナーとして存在するものだったのである。それらの神々には、火や水、風といった自然神、クマ、キツネといった動物神、トリカブト、キノコといった植物神、舟、鍋といった物神、さらに家を守る神、山の神、湖の神などがある。そういった神に対して人間のことを「アイヌ」と呼んでいたのである。つまりアイヌとは、「人間」を意味しているのである。この神への信仰こそがアイヌ民族の最大の特徴といえるであろう。また、アイヌ民族の生活と自然は深く関わっており、彼らの衣食住にもその様子は現れている。
まず、最初にアイヌ民族の食生活について見ていこうと思う。アイヌ民族はよく狩猟民族を言われるが、狩猟だけで生活していたわけではない。畑を耕して農作物を作ったり、山菜を採取したり、魚などを取ったりして生活をしていた。仕事の役割は、男は狩りを、女は畑仕事や山菜の採取・...