近年、世界一の長寿国となっている我が国ではあるが、高齢者世帯の増加や核家族化など、家族員の減少が家庭内介護力を著しく低下させている。こういった問題を踏まえ、社会全体で要介護者や介護者を支えていく仕組みとして、介護保険制度が施行された。しかし、新しい制度が確立され、高齢者を取り巻く環境がクローズアップされてくると、今まで見えにくかった高齢者の実態が明らかとなり、様々な課題が出現している。
その中でも昨今、高い関心を集めているのが高齢者虐待の問題であり、2004年には厚生労働省が「家庭内における高齢者虐待に関する調査」を、その他自治体や関係機関においても、高齢者が生活する在宅や施設に対する調査が行われている。
それらによると、高齢者虐待が起きる原因として、家庭内では介護疲れやストレス、また人間関係の歪みなどが挙げられ、施設等では、人員配置や長時間労働のストレスなど、環境面での問題が多く挙げられた。
また、虐待の種類としては、心理的虐待や介護・世話の放棄、身体的虐待が上位を占めたが、重複例も多数あった。そして被害者の約8割が、認知症高齢者であることや、約5割の加害者に虐待しているという...